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2024/11/23 18:07 |
榎益プチアンソロ主催します
更新履歴にもリンクを貼っておりますが、5月3日の京極プチオンリーで
榎木津×益田プチアンソロジー『E=mc2』を発行させて頂きます!



榎木津と益田の短いお話を集めたアンソロジーです。
快く依頼にお答えくださった執筆者の皆様にも、今から感謝の気持ちで一杯です。全ての榎益好きの皆様に楽しんで頂けるものになるよう、精一杯頑張りますので宜しくお願い致します!
参加型のアンケート企画なども出来たら良いなぁと企画している所ですので、興味のある方は是非ご参加ください。

この前冬コミだったと思ったらもう2月ですね。プチオンリーまで3ヶ月です。は、早い…!

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2010/02/02 00:48 | Comments(0) | TrackBack() | 雑記
1月拍手お礼文
とっくに煩悩を打ち払う鐘の音も静まり、残響すらも闇に溶けた刻限。
薔薇十字探偵社にはモダンな内装に似合わぬ量の酒瓶やら空の皿が転がっている。
更には、申し訳程度に毛布を被せられた2つの影。
1つは何の前触れも無くカッと双眸を見開いたかと思うと、飛び上がるようにして――否、彼は正しく飛び上がっていた――立ち上がる。眠りを守る用を失った毛布がずるりと滑り、長い脚が邪魔だと云わんばかりに其れを蹴り上げる。

「初日の出だッ!!」

朗々とした声は、冷えた夜気と闇に広がってふっと消えた。答える者は無い。
榎木津は酒瓶を蹴散らしつつ、手探りで電気を点した。日の出よりもずっと白く人工的な光が室内を照らす。
姿の見えない和寅は、私室で眠っているのだろう。本家に戻り損ねる程の激務から束の間開放されて。
榎木津が目を止めたのは、ソファの上で飲みかけの杯も其のままに力尽きている下僕の方だった。
やや緩んだ襟元を掴み、遠慮会釈無く揺さぶってやる。頭ががくがくと揺れ、長い髪が踊った。

「そぅらマスヤマ起きろ!神の目覚めだ!ご来光だぞ!」
「う、うう」

反射のような、単純に苦悶のような声が上がったのを確かめ、榎木津はぱっと手を放す。抵抗無く落ちた益田の頭が肘掛にぶつかって、ごつりと重い音を立てた。馬乗りになったままで、じっと下僕の様子を確かめる。鳶色の瞳が、薄い瞼が震えるのを注視している。
今にも開かれるかと思われた瞳の代わりに、唇がむにゃむにゃと不明瞭な言葉を呟き、そして。

「―――え、のきづ、さぁん……」

思いのほかはっきりと聞こえた声に面食らっている榎木津の目の前で、益田の表情が緩む。眉からも瞼からもふっと力が抜け、口元をぽかりと開いて。
締まりの無い、緩みきった、だらしの無い―――なんの憂いも無さそうな貌。

「…………」

榎木津は暫く其れを眺めていたが、やがて自分の顎に指先をやって、何にとも無く頷いた。





橙色に包み込まれ何処か神聖な気配漂う景色の中、百年の眠りを妨げられたような不機嫌面をした中禅寺が立っている。
大きすぎる「荷物」を抱えた早すぎる来客を前に、機嫌良く微笑む方が無理というものだ。

「うはははは!初日の出だぞ!」
「ああまぁ其れは良いんですがね――「其れ」はどうした事だね?お年賀にしては巨大すぎるように見えるのだが」

骨ばった指先が示した物は、榎木津の右肩に引っかかっている。毛布で簀巻きにされて、丈が足りない分飛び出した足先には靴すら履かされていない。
榎木津は無抵抗な身体を抱えなおすと、赤子を見せる時のようにずいと益田の顔を差し出す。

「叩き起こして車を出させる予定だったが、どうも凄ォく楽しい夢を見てるらしい。見たまえ、此のだらんとした下僕面を」
「あまり元旦の朝から見たい物では無いね。――結局自分で運転して来たんだろう?益田君は置いてくれば良かったものを」
「折角楽しい夢を見てるのに、起きたら全部幻じゃあ気の毒だろう。寝ても覚めても神が居ると云うのが僕からのお年玉だ!」
「其れは其れは……」
「どうだ羨ましかろう。あげないよ。うふふふふ」

仏頂面の中禅寺を差し置いて、榎木津だけが、さも機嫌が良さそうに益田の頬を突いている。
薄い眉は其の都度迷惑そうに歪んだが、直ぐにへなりと幸せそうな顔に戻ってしまう。幾度か繰り返して見せると、榎木津は何故か自慢げに笑って見せた。


数時間後。
京極堂の座敷で目を覚ました益田は、はて自分は探偵事務所で酔いつぶれていたのではと思い、余程変な夢を見ているような気分にさせられたと云う。



―――
除夜の鐘も初日の出も初夢も遅刻ですが、マスヤマの幸せは365日有効なので問題ありません。





2010/02/01 23:30 | Comments(0) | TrackBack() | 益田
2.恋愛感情って何だ
好きだと、云ってみたことがある。


榎木津自身、どうしてそんな事を口にしてみる気になったのかは解らない。特に云うぞと決めた訳でも、意を決して
声に出した訳でも無いのだ。「今日は良い天気だ」とか「ご飯が美味しい」とか、そう云う日常的な深い意味の無い呟きにも似ていた。
其の日、ばたばたと忙しそうに動き回っていたのは和寅だけで、榎木津は退屈を持て余していた。探偵机の上に投げ出した両足の間から、下僕の横顔が見えていた。書棚に詰まった本の背表紙をつらつらと眺めている。彼も退屈だったのかもしれない。

「――おい、益山」

呼びかけると、益田は声を出さずにふっと榎木津に振り向いた。顔の前に落ちた前髪の一筋を、慣れた仕草で耳に掛ける。遮るものの無い視界で榎木津を認めた彼は、「はい」だとか「なんですか」とか云ったような気がする。榎木津はちゃんと聞いていなかった。ぽろりと零れた言葉が、益田の相槌を遮るように飛んだ所為で。

「すきだ」

浴室の方から水を流す音がする。和寅が風呂掃除でもしているのだろう。注意していなければ気づかないほどの何気無い生活音は榎木津の声をかき消すはずもなく、益田の耳にも届いた筈だ。薄い眉の下で、瞼が2,3度瞬いて。

「―――はぁ」

同じ距離を通って榎木津の元に返ってきたものは、ひどく間の抜けた返事だった。声も気が抜けたと云うか、何の感情も入っていない。靴の間から覗く益田の顔も似たようなものだった。怒るでもなく、顔を赤らめるでもなく、只黒い瞳が自分を見ている。
榎木津は自分から誰かに好きだと云ってみたことが無かったし、益田に何かを期待していた訳でも無かったので、特に落胆も苛立ちもしなかった。ただ、待っていた。これで終わりでは無いだろうと。
益田は少し考えるように視線を宙に泳がせ、頬を指先でかりかりと掻いてから、また榎木津に向き直った。

「…ええと、其れは」
「其れは?」
「従業員としてと云う意味ですか?それとも――其の、れ、恋愛感情として」

今度宙を見るのは榎木津の方だった。何時もながら此の男は変な事を聞く。
執拗いようだが、特に意図があって云った訳では無いのだ。好きだから好きだと云ったので、其れだけ受け止めておけば良いものを、逐一意味まで求めてくる。持て成しのつもりで焼き魚を出してやったら、箸をつける前に、此の魚は何時何処で獲れたどういう由来のものですかと聞かれたような気分だ。無礼千万にも程が或る。いい加減其れ位の事は解っても良いものだと、榎木津は此処に来てようやく苛立ちを覚えた。
仮に、恋愛感情としての好きだと噛んで含めるように云ってやったら。この物分りの悪い男はどんな顔をするのだろうかと、少しだけ興味は湧いたけれど。
益田の眼がじっと答えを待っている。

「……さぁ?」
「さ、さぁって!榎木津さんが云ったんでしょうよ」
「僕が知るものか、そんな事」
「本人が解らない物が僕に解る訳無いじゃないですかもう、なんなんですかぁ。急に云われたら吃驚するじゃないですか!」

けらけらという益田の笑い声を聞きつけたか、和寅が戻ってきた。

「なんだなんだ、馬鹿笑いして」
「ちょっともう聞いてくださいよ和寅さァん、榎木津さんが良く解らないんですよ」

益田は手振りを交えて和寅に話しかけている。榎木津は机上から足を下ろして、くるりと窓に向き直った。薄手のカーテンの向こうに、神保町の空が見える。

「空が青いなァ」

言葉がまた、ぽろりと零れた。当たり前の事を当たり前に云っただけだ。空が青く雲が白い事と、彼が好きだと云う事は、いつの間にか榎木津の中で同じ所に収まっていた。もはや疑う事も無い。

(僕はあの、物分りの悪い男が好きなのだ)

革張りの椅子の向こうから、いつも通りの硬質な笑い声が聞こえる。好きだと云われて泣き出されるよりは面倒が無くて良いのだけれど、気に入らない事が一つ或る。

「さぁ?」と首を傾げてみせた時、あからさまにほっとしたような顔をしたから。

(二度と云ってやるものか)

当たり前の事を当たり前に受け止めない愚か者に、特別を欲しがる資格は無い。





―――
なんともはや。




2010/01/30 22:03 | Comments(0) | TrackBack() | 益田
Web拍手お返事です
Web拍手お返事です。ありがとうございます。

>AQUI様
こんにちは。拍手有難うございます。お返事が遅れまして申し訳ございません。
益榎のお祭となれば応援せねばなるまいと思っておりましたので、お声を掛けて頂いて嬉しいです。
ひっそりと参加させて頂きましたが、あちらのコメントフォームにも感想をくださって有難うございました。また改めて御礼に伺います。
幸せ益田がお好きなのですね。私もゆっくりではありますがマスヤマの幸せを模索して参りますので、また遊びに来て頂けたら幸いです。
最近は1月とは思えぬほど暖かい日が続いておりますね。お互い体調に気をつけて益田を愛でる方向で参りましょう。有難うございました!

>菊川様
本の感想ありがとうございます!お返事が遅れてしまい申し訳ございませんでした。わーいわーい!
居候本「今日からふたりで」、凄く楽しく書けました。唐突に益田が愛されすぎだったろうかとも思いましたが、益田が調子の良い男なのでご近所受けは良いのではという妄想です…。益田の日常に榎木津が分け入って来た場合、其れを窮屈に思いながらも受け入れてしまいそうな益田っていうのが書きたかったです。また1行でいえる萌えを長々と本にしてしまいました!
合同誌もおかげさまで楽しかったです!漫画で榎益を描くとまた違った感じになって面白いですね。凄く踏み込んだ感想を頂けて有難いやら恥ずかしいやら、本当に嬉しいです。菊川様の卓越した漫画表現を改めて尊敬した次第でございます。ゲスト原稿頂けて嬉しかったです!また近々宜しくお願い致します(小声で)
ありがとうございました!

>真宏様
拍手文お読み頂きありがとうございます。あぁっ此処も寝る益田だった!寝る益田まみれのブログですみません。
益田の見てない所でデレる榎木津が好きなんです。
いつもありがとうございます。今後とも宜しくお願いし益田。

>いか様
長らくお待たせ致しました。「はじめての~」お読み頂いて有難うございます。榎木津視点は難しいと…知っていたはずが…。うちの榎木津はなんかもだもだごろごろしている感じが強いですね。益田の幸せもいいけど榎木津の幸せもね!って感じです。が…頑張りま~す…。
もどかしくない榎益榎もいつかは書いてみたいものです。ありがとうございました!
あと可愛すぎる摂津殿を有難うございました!布教してよかったサムライうさぎ。

>ミロ様
はじめまして、ハム星と申します。こちらこそいつもサイトを拝見させて頂いております。メロウな榎益もスイートな榎益も両方楽しめて有難いです。
「はじめての~」へのご感想有難うございます。自分設定で申し訳無いのですが、確かに当方では「榎木津の居るベッドで夜を明かさない益田」という縛りを設けております。逃げ回る益田ですみません。追って追われる榎益榎が好きです。
以前から遊びに来て頂いていたとのこと、恐縮です。ささやかではありますが拙ブログがミロ様の榎益熱に火をつける一助となれた事を嬉しく思います!これからはリンクのみならず是非榎益ぐるみでのお付き合いを(何を言っているのか)有難うございました。

叩いてくださった方も、ありがとうございました。
物凄く沢山頂けて吃驚致しました。頑張ります。



今回のコミック怪は発売日前に買えて益田貴族だったわけですが、感想を書くのが今になってしまって意味がない感じです。
何はともあれ八重歯解禁おめでとうございます!前回には八重歯描写ありませんでしたよね?お茶の運び方がかわいかったです。ちゃんと立ったら結構脚長いんじゃないだろうか という夢…。
「いいから京極に早く説明しろ僕は一寸寝る」のコマでナチュラルに益田の膝に横になったのかと思い3度見してしまったのは私だけで…良い…。



2010/01/27 11:29 | Comments(0) | TrackBack() | 雑記
はじめてのひと候補
午睡から覚めたばかりの榎木津の目がきらりと輝いた。
色素の薄い瞳が見つめる先は、積み上げられた古書でも、仏頂面で活字を追いかけている主人でも無い。浅黄色の浴衣に埋もれて眠る飼い猫でも無かった。
赤い実を付けた南天の木陰に、ふくふくと丸く雪のように白い何かが居る。

「――にゃんこだ。白にゃんこがいる!新顔だ!」

期待に溢れた声を聞きとがめ、ようやく中禅寺が顔を上げた。

「最近庭に来る野良ですよ。まだ人に慣れていないから―――」

言いかけた時、其処には既に榎木津の姿は無かった。
がさがさと云う音は庭木の間に男が分け入っているからだろう。時折小枝が折れる音もする。中禅寺はあからさまに眉を顰めた。
程なくして戻ってきた榎木津は、案の定あちらこちらに木の葉や砂をくっつけていた。しかし腕の中は空っぽだ。

「逃げられた」
「人の話は聞くものだよ榎さん」
「煩い、本馬鹿!」

榎木津は憮然とした様子で、畳の上に身を投げた。真冬に戸を開け放っての昼寝は流石に堪えるものがあるが、今日のような小春日和には昼寝も悪くは無い。腹の上にあの柔らかそうな生き物を眠らせる事が出来たら更に良かったのに。
榎木津が一歩近寄った途端、閉じていた目を見開いてさっと逃げていってしまった。

「どいつもこいつも馬鹿ばかりだ」

紙が擦れる乾いた音だけが其の声に答える。
陽だまりの中に投げ出した指先が僅かに動き、何かを撫でる真似をした。
猫の腹を擽ったような、或いは、さらりと指の間をすり抜ける黒髪を掬ったような。何度と無く繰り返した仕草。人の名を覚えぬ榎木津も、此の感触は指先が覚えている。
木陰に一瞬垣間見た緑色の目と、細い瞼の中で揺れる黒い瞳が重なる。似ても似つかない二つに重なる部分があるとすれば、浮かぶ驚愕ないし警戒の色だ。其れを見て榎木津があっと思った時には、もう何処か遠くへ逃げ去ってしまっている。
前髪に絡んだ枯葉を取り除き、ふっと吹いた。水気を無くして茶気た葉は呆気なく宙に舞う。
昼下がりの陽光は暖かい。閉じた瞼越しに、眼の奥まで温めてくれるようだ。けれど榎木津が欲しいのは、太陽が失せた夜のもの。確かに腕に収めた筈なのに、夜が明けると朧月のように消えているもの。明るい所で触ってみると、温もりを知る前に戸惑った視線ばかりが榎木津を刺すのだ。
あれだって温もりが嫌いな訳は無いだろうに。解らない事ばかりだ。

「――機嫌が悪いね」
「べェつに」

榎木津はごろりと身を翻し、縁側に出た。板間には日光が良く当たっていて、頬で直に触ると熱い程だ。閉じかけた瞼をふと上げると、縁石の上に白い背中が見える。腕下ろして指で探ると、柔らかな毛並に埋まった。指の甲でするりと撫でてみても、猫は逃げない。背後で本が閉じる音がして、飼い猫がにゃあと鳴いた。

「気は済んだかい?」
「そんなわけあるか、まだまだ足りない」

掌で尻尾を掬った途端、猫は飛び跳ねるようにして立ち上がり、榎木津の手から離れた。同時に姿も見えなくなる。縁側の下にでも潜ってしまったのだろう。
横になっている理由を失い、榎木津はむくりと起き上がった。

「足りないんだよ」

ぎしぎしと云う板鳴りの音が遠ざかり、中禅寺はだるそうに頭を振った。
膝の上で、猫が眠っている。



―――
じれったい。




2010/01/26 11:23 | Comments(0) | 益田

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