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2024/11/22 23:12 |
7.チャイナ服
司×益田です。ご注意。




「ちょっ… そんなに笑わないでくださいよ!」
「だってさぁ… あははははは、益田ちゃん、あははは」

色眼鏡の奥で目を細めて、転げまわって楽しげに笑う男。彼の衣服で飛び回る派手な蝶にまで嘲笑されている気がして、益田は納得がいかないような、腹が立つような恥ずかしいような奇妙な心地がして、仕方なく笑った。こんな服を寄越したのは自分だと云うのに馬鹿笑いとはなんだ。
笑いすぎたせいか床に蹲って死にかけの蝉同然の有様を晒している司の向こう、硝子窓に呆然と立ち尽くす益田の姿が映っている。纏った真っ赤な民族衣装は凹凸の無い痩せた体にぴったりと張り付き、貧弱な郵便ポストに似ていると思った。

「司さんがお土産って買ってきたんでしょ!」
「いやそうだけど、そうだけどさ… あはは、まさか本当に着るとは、はははははは」

息も絶え絶えの司がそんな事を云うものだから、遂に益田はくるりと踵を返す。翻った衣装の裾を、司の手が掴んだ。

「まだ脱がないでよ、今着たばかりじゃない」
「だって、司さん笑うじゃないですか!」
「いやァまさか本当に着るとは思ってなかったからさァ―――よっと」

床に転がっていた司が、半身を起こす。片膝を立て益田を見上げる姿勢は、女王に跪く従者の其れで、気づいた益田はたじろいだ。年上の司にそんな真似をされては困ってしまう。
だが益田の狼狽に構わず、司は微笑んでいる。口端を持ち上げ、色付き硝子から透けて見える目を細めて。

「でも選ぶときは益田ちゃんに似合うやつを探したのさ、これ本当」

思った通り、益田ちゃんは紅が似合うよね。
歌うようにそう云った司の手が、すっと益田の脚を撫でた。長い丈に思い切り入ったスリットは、脚を隠そうともしない。面くらい大きく見開かれた益田の瞳に反比例するように、司の目が益々細められる。蛇のようだ。

「ちょっと、司さん…!」
「益田ちゃん脚の毛どうしたの? 剃ったの? それとも元々薄いの?」

居酒屋の暖簾にするように衣装の裾を思い切り捲られ、益田の喉から引きつった悲鳴が漏れる。元来血の気の薄い頬は今や上気して、緋色の布地に負けずとも劣らぬ赤に染まっている。足元から舐める様に益田を見上げ、真っ赤な頬を見つけた司が、思わず唇を舐めた舌もまた。

「駄目じゃない、質問にはちゃアんと答えなきゃ。益田ちゃん大人でしょ? 聞き分けの無い子は、身体に聞いちゃうよ?」
「……っ」

夜の街で交わされる下卑た軽口にも、まともに答える術を持たないこの青年を、司は事の外気に入っている。
酒の席での猥談には幾らでも付き合う癖に、少し突いてやるとこの様だ。果たして何処までが彼自身なのか、本当に身体に聞いてやるのもいいかもしれない。
引き寄せた脚は男の硬さをしてはいたが恐ろしく細く、次は感触が知りたくなる。司は笑みの形を崩す事無く舌を伸ばした。



―――
「益田だって男だから脛毛くらい生えるわボケ」派の私と「益田に脛毛なんか生えない」派の私が殴り合いの結果、どちらにしても剃る剃らないのやり取りは外せないということで和解しました。



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2011/04/01 23:21 | Comments(0) | 未選択

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