革張りの背もたれの上に、丸い頭が飛び出している。
何か書き物でもしているのか、僅かに俯いた頭は時折傾いでみたりしている。
榎木津は何となく其れを眺める。こちらを振り向く様子は無い。
革靴からそっと自分の足を抜き取る。靴下越しに触れる床は、人肌に慣れない冷たさを持つ。
猫を真似た足捌きで音を立てずに近づけば、一歩毎に、ぼやけた視界の中で輪郭がはっきりと浮き上がる。
尖った肩から続く痩せた首に載った其れは、人工的な白い灯を浴びて、頭の形に沿った矢張り丸い輪を戴いていた。
榎木津の柔らかな髪とは明らかに異質な、硬質さを思わせる。
硬質とは言っても、例えば足の裏で触れている床とはきっと違うのだろう。
こんなに冷たく、安定はしていないだろう。指で触れれば束が解け、さらりと流れ落ちる筈だ。
伸ばしかけた手を、ふと留める。
二、三度瞬きして、そっと腰を屈めた。黒髪にはっきりと浮かんでいた白い光が、榎木津の影に隠れて消える。
唇で確かめるであろう髪の温度は、温かいのだろうか、冷たいのだろうか。
其れも間もなく、解る事だ。
―――
コミカライズ版益田はツヤ無しの総ベタ髪ですが、天使の輪持ちの益田も良いと思うんです。
短くてスミマセン…
何か書き物でもしているのか、僅かに俯いた頭は時折傾いでみたりしている。
榎木津は何となく其れを眺める。こちらを振り向く様子は無い。
革靴からそっと自分の足を抜き取る。靴下越しに触れる床は、人肌に慣れない冷たさを持つ。
猫を真似た足捌きで音を立てずに近づけば、一歩毎に、ぼやけた視界の中で輪郭がはっきりと浮き上がる。
尖った肩から続く痩せた首に載った其れは、人工的な白い灯を浴びて、頭の形に沿った矢張り丸い輪を戴いていた。
榎木津の柔らかな髪とは明らかに異質な、硬質さを思わせる。
硬質とは言っても、例えば足の裏で触れている床とはきっと違うのだろう。
こんなに冷たく、安定はしていないだろう。指で触れれば束が解け、さらりと流れ落ちる筈だ。
伸ばしかけた手を、ふと留める。
二、三度瞬きして、そっと腰を屈めた。黒髪にはっきりと浮かんでいた白い光が、榎木津の影に隠れて消える。
唇で確かめるであろう髪の温度は、温かいのだろうか、冷たいのだろうか。
其れも間もなく、解る事だ。
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コミカライズ版益田はツヤ無しの総ベタ髪ですが、天使の輪持ちの益田も良いと思うんです。
短くてスミマセン…
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