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2024/11/23 08:23 |
2.どうして、と訊けない
「どうして僕なんかと一緒に居てくれるんですか?」と訊いてみました。





「薔薇十字団の仲間じゃないすか、変なこと云うなぁ」

そう云って、鳥口君は笑いました(酔っていたからかも知れません)。
だから僕も酔っていることにして、「ですよねェ」とへらへら笑って、話題を変えました。
その話が盛り上がったので、先程の馬鹿げた質問は、彼の頭には恐らく留まる事無く酒と一緒に抜けてくれる事でしょう。
とは云え概ね好意的な返事を貰った事は、僕も悪い気はしなかったので、良い気になってどんどんグラスを空けました。
翌朝僕の頭蓋を内側から叩く割れ鐘に似た鈍痛によって、昨夜の蛮行を反省しましたが、鳥口君に質問した事については後悔していません。





「どうしてそんな事訊くんだい?」

そう云って、青木さんは不審そうに僕の顔を見つめました。
悪いなぁとは思いますが、表情が失せると本当にこけしに似ています。
重い空気を何とかしようと、「厭だなァ青木さん、質問を質問で返すのは疚しい事がある証拠らしいですよ?」と誤魔化してはみましたが、青木さんはそう簡単ではありませんでした。
疚しい事があるのはお前の方だ、と言いたげにじっとこちらを見ています。青木さんのこういう処本当面倒臭いよなァ、と後悔することしきりでした。
どんどん沈む空気の中で、僕の張り付いた笑顔ばかりが上滑りする夜でした。





「別に一緒に居るつもりじゃないけれどね。同僚だからかな、しいて云えば」

そう云って、和寅さんは掃除に戻りました。
ゴキブリ男と酷い仇名で呼ばれる彼ですが、窓掃除をするその掌が行き過ぎた部分は、一層晴れやかに青空を映し出しています。
僕など居ないように黙々と拭き掃除を終えた彼は、よいしょ、と声をあげて水で満たされたバケツを持ってふらふらと歩き出しました。
和寅さんが消えた室内は、何だか妙に広く感じます。
磨いたばかりの窓硝子にそっと触れると、白い指紋が残ってしまいました。
「しまったな」と思いましたが、それだけです。拭えば消える指紋同様、彼との一連のやりとりが僕の心に残ることはありませんでした。




榎木津さんですか?
訊けるわけないじゃあないですか。
仮にですよ、訊いてみたとしますよ。僕だと思って考えてください。―――ほらね、良い答えなんか返ってこなかったでしょうが。
逆に良い答えって何でしょうねェ?「お前を手放したくないからだッ!」…嗚呼駄目だ、全然似てなかった。すみません。失敗です。僕の隠し芸なのになぁ。
僕ぁ負けると判ってる勝負はしない主義なんです。とっくにご存知でしょ?



お題提供:『ラルゴポット』様
 

――――
春コミ前でテンション上がりすぎて逆に陰気な話に…明日は益田分補給してきます!



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2009/03/15 00:08 | Comments(0) | TrackBack() | 益田

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