榎木津×エチオピヤ人R15。五徳猫ネタバレ及び性描写を含みます。ご注意。
腿に感じる圧迫感は、見た目よりもずっと重い。半泣きの従者が必死で抱えている鞄の所為だ。中には、彼と彼の家族が一生米の飯を食う為に必要な金額に匹敵する現金が詰まっている。
紅く染まった目尻から続く皮膚は、太陽の国たる彼の生国に住む人種と比べればずっと白い。今は剥き出しの素足などは尚更白い。黒い鞄に触れる手の甲に浮いた血管の青さが目についた。
後孔に食ませた中指が熱い。太陽よりも余程直接的で、湿った熱。あげつらうように突き上げてやれば、力が抜けたのか鞄がずるりと滑り、口元から引き攣った声があがる。
痩せぎすの身体ごと、鞄を引き上げてやった。
「しっかり抱えていたまえ。それが君の仕事だろう」
ハイソウデスと、上擦った言葉。イントネーションが可笑しいのは、この言語に慣れていない所為ばかりではない。榎木津はくすくすと、態と耳元に聞かせる様に嗤った。こうするだけで従者はやってもいない失態に脅え、身を強張らせるのだ。可哀想な荷物持ちは、痩せた肩越しに主人の機嫌を伺っている。
脅える子どもに接するように、榎木津は微笑んで前髪に隠れた黒い瞳に近づいた。怖がらなくて良い、と囁いたけれど瞳の揺れは止まらない。其処まで計算ずくだ。
「良いかい君、此れを持ちたいと云ったのは誰だった」
「ワタシデス、コレワタシノシゴト」
「そうだねぇ。だったら重いなんて泣かないで、きちんと仕事をしなくては」
云い終わらぬうちに指の数を増やしてやった。衝撃に黒曜石が収束するのが面白い。涙を吸い上げてやると、戯れ程度の其れにも快感を拾ってしまうのか柔らかい目尻が赤みを増した。
従者が身を捩るたびに、上半身に纏ったままの不思議な衣装が踊る。詩人に似ているのは格好だけで、彼が紡ぐのはままならぬ日本語と、言葉ですらない吐息ばかりである。
胸に抱えた鞄が邪魔で見えはしないが、後から後から湿りを増す感触だけで彼自身がどうなっているかは容易に知れた。
潜った指の刺激だけで気をやってしまうのは流石に哀れだ。榎木津の指先が、緩い衣装の裾から忍び込んで
薄い腹をなぞり、胸元の突起に触れる。
竦んだ腕から鞄が抜け落ちて、細い腿の上にまともに落ちた。榎木津も驚いたが、直接的な痛みを被った従者が悲鳴を上げた。それでも、滑り落ちかけた荷物を身体ごと抱え込んでいる。
これは痣になるだろう。悪戯を仕掛けた手を引っ込めて、角が食い込んだ部位をそっと撫でた。
「痛かっただろう、鞄を置けば良いのに」
瞳と同じ色合いの髪が揺れる。拒否の意。俯いた横顔から、透明な雫が落ちた。
「ワタシ、コメ、クイタイデス」
声は弱弱しいが、その言葉には強い意思のようなものが伺え、榎木津は眉を顰めた。装束や言葉が変わっても、強情な所は変わらない。
黒い皇かな面にしっかりと触れている青白い手に自らの手も添えて、緩んだ心の隙間にそっと吹き込む、とっておきの甘い声。
「米なんか僕が一生食べさせてあげる。だから鞄を置きなさい」
重ねた手から力が抜けて、重い鞄が滑り落ちる。どかりと床にぶつかる大きな音に交じって、虚飾の鎧が砕ける音が聞こえた。
榎木津を振り仰いだその顔は、黒い瞳も黒い髪も全く変わっては居なかったけれど、緊張の糸が解けた表情は久しく見られなかった。
「榎木津さん…!」
涙交じりに掠れた声に違った――本来の彼の言葉――響きを聞き、榎木津は遊戯の終了を悟る。
深く埋め込まれた指を引き抜き、にやありと嗤った。
「はい、マスヤマの負け」
人格者の仮面を脱ぎ捨て、衝動の侭従者だったものに突き込めば、偽り無い嬌声が散った。生温い愛撫には飽き飽きしていたところだ。
床に静かに在る鞄が、僅かに濡れて光っている。
――――
シロ様リクエスト『マスカマダ・カマスカス』でした。ありがとうございました。
ひどいギャグですみません。まともな榎木津にリベンジしてみたんですが…やっぱり駄目だった。
紅く染まった目尻から続く皮膚は、太陽の国たる彼の生国に住む人種と比べればずっと白い。今は剥き出しの素足などは尚更白い。黒い鞄に触れる手の甲に浮いた血管の青さが目についた。
後孔に食ませた中指が熱い。太陽よりも余程直接的で、湿った熱。あげつらうように突き上げてやれば、力が抜けたのか鞄がずるりと滑り、口元から引き攣った声があがる。
痩せぎすの身体ごと、鞄を引き上げてやった。
「しっかり抱えていたまえ。それが君の仕事だろう」
ハイソウデスと、上擦った言葉。イントネーションが可笑しいのは、この言語に慣れていない所為ばかりではない。榎木津はくすくすと、態と耳元に聞かせる様に嗤った。こうするだけで従者はやってもいない失態に脅え、身を強張らせるのだ。可哀想な荷物持ちは、痩せた肩越しに主人の機嫌を伺っている。
脅える子どもに接するように、榎木津は微笑んで前髪に隠れた黒い瞳に近づいた。怖がらなくて良い、と囁いたけれど瞳の揺れは止まらない。其処まで計算ずくだ。
「良いかい君、此れを持ちたいと云ったのは誰だった」
「ワタシデス、コレワタシノシゴト」
「そうだねぇ。だったら重いなんて泣かないで、きちんと仕事をしなくては」
云い終わらぬうちに指の数を増やしてやった。衝撃に黒曜石が収束するのが面白い。涙を吸い上げてやると、戯れ程度の其れにも快感を拾ってしまうのか柔らかい目尻が赤みを増した。
従者が身を捩るたびに、上半身に纏ったままの不思議な衣装が踊る。詩人に似ているのは格好だけで、彼が紡ぐのはままならぬ日本語と、言葉ですらない吐息ばかりである。
胸に抱えた鞄が邪魔で見えはしないが、後から後から湿りを増す感触だけで彼自身がどうなっているかは容易に知れた。
潜った指の刺激だけで気をやってしまうのは流石に哀れだ。榎木津の指先が、緩い衣装の裾から忍び込んで
薄い腹をなぞり、胸元の突起に触れる。
竦んだ腕から鞄が抜け落ちて、細い腿の上にまともに落ちた。榎木津も驚いたが、直接的な痛みを被った従者が悲鳴を上げた。それでも、滑り落ちかけた荷物を身体ごと抱え込んでいる。
これは痣になるだろう。悪戯を仕掛けた手を引っ込めて、角が食い込んだ部位をそっと撫でた。
「痛かっただろう、鞄を置けば良いのに」
瞳と同じ色合いの髪が揺れる。拒否の意。俯いた横顔から、透明な雫が落ちた。
「ワタシ、コメ、クイタイデス」
声は弱弱しいが、その言葉には強い意思のようなものが伺え、榎木津は眉を顰めた。装束や言葉が変わっても、強情な所は変わらない。
黒い皇かな面にしっかりと触れている青白い手に自らの手も添えて、緩んだ心の隙間にそっと吹き込む、とっておきの甘い声。
「米なんか僕が一生食べさせてあげる。だから鞄を置きなさい」
重ねた手から力が抜けて、重い鞄が滑り落ちる。どかりと床にぶつかる大きな音に交じって、虚飾の鎧が砕ける音が聞こえた。
榎木津を振り仰いだその顔は、黒い瞳も黒い髪も全く変わっては居なかったけれど、緊張の糸が解けた表情は久しく見られなかった。
「榎木津さん…!」
涙交じりに掠れた声に違った――本来の彼の言葉――響きを聞き、榎木津は遊戯の終了を悟る。
深く埋め込まれた指を引き抜き、にやありと嗤った。
「はい、マスヤマの負け」
人格者の仮面を脱ぎ捨て、衝動の侭従者だったものに突き込めば、偽り無い嬌声が散った。生温い愛撫には飽き飽きしていたところだ。
床に静かに在る鞄が、僅かに濡れて光っている。
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シロ様リクエスト『マスカマダ・カマスカス』でした。ありがとうございました。
ひどいギャグですみません。まともな榎木津にリベンジしてみたんですが…やっぱり駄目だった。
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