Web拍手お返事です。ありがとうございます。
>真宏様
拍手読んでくださってありがとうございました。お返事が遅れまして申し訳ございません。
寸止めですみません。そうか…浪漫を見誤っていたか…まだ修行が足りませんね。
いつか榎木津と益田がお風呂でにゃんにゃんする話を堂々と書けるようになるまで、頑張ります!(また間違っている気がします)
ありがとうございました。
>蒼月様
コメントありがとうございます。長い間留守にしていて、申し訳ありませんでした。
戻って早々蒼月様から拍手を頂けて嬉しいです。帰ってきて良かった!って気がします。
伏線とか理由とか全部取っ払った即物的な拍手ですみません。
蒼月様が以前書いてらしたお風呂話を見習いたいものです。
拙ブログが少しでも蒼月様の萌えに繋がっていたら幸いです。ありがとうございました。
>いか様
『4.魔法のランプは~』お読み頂いてありがとうございます。
実際膝を割られる益田が書きたかった だけ と云っても過言ではありませんので(おい…)注目して貰えて有難いです。
拍手も読んでくださって嬉しいです。お風呂は浪漫ですよねホントに!
私もいか様が大好きです!その後薄笑いを浮かべる榎木津礼二郎20回くらい見ました。
18日の件につきましては、またメールさせて頂きます。わざわざありがとうございました。
>堀河様
『5.白雪姫の~』お読み頂いてありがとうございます&おかえりなさいませ!
また堀河様のサイトが見られるようになって嬉しいです。通ってます。牛かわいいです。
青木様は攻だと思っていたのですが実際書いてみたら思いのほか受で…あれ…びっくりした…。
「青木さん」とか呼んでますが青木に対して下から上から目線みたいなところあると思うので、そこが萌えです。
「常識的にかわいい」っていうお言葉に笑いました。日常的に使いたいです。
ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
――――
というわけで、帰って参りました。4月は残酷な季節でした…。しばらく締め切りは無いので、通常ペースでとことこやっていこうと思っております。眩暈坂上までいつの間にか半年を切った(!)ので、どんな本を作ろうかなぁと考えているところです。楽しみすぎて死にそうですがまだ死ねない。頑張ります。チャットもまたやりたいです。
先日真宏様のところで榎益チャットにお邪魔したのですが、その時に「無人島DE榎益」で盛り上がったのが忘れられません。誰かやってくれませんか、無人島企画…。滝壺とか手ごろな洞窟とか断崖絶壁とか浅瀬とか果物が取れる木とか花畑とか温泉とかが全部ある外周3キロ程度の小さな無人島に榎木津と益田を放ってみる企画なんですけど(誰得)(私得)
>真宏様
拍手読んでくださってありがとうございました。お返事が遅れまして申し訳ございません。
寸止めですみません。そうか…浪漫を見誤っていたか…まだ修行が足りませんね。
いつか榎木津と益田がお風呂でにゃんにゃんする話を堂々と書けるようになるまで、頑張ります!(また間違っている気がします)
ありがとうございました。
>蒼月様
コメントありがとうございます。長い間留守にしていて、申し訳ありませんでした。
戻って早々蒼月様から拍手を頂けて嬉しいです。帰ってきて良かった!って気がします。
伏線とか理由とか全部取っ払った即物的な拍手ですみません。
蒼月様が以前書いてらしたお風呂話を見習いたいものです。
拙ブログが少しでも蒼月様の萌えに繋がっていたら幸いです。ありがとうございました。
>いか様
『4.魔法のランプは~』お読み頂いてありがとうございます。
実際膝を割られる益田が書きたかった だけ と云っても過言ではありませんので(おい…)注目して貰えて有難いです。
拍手も読んでくださって嬉しいです。お風呂は浪漫ですよねホントに!
私もいか様が大好きです!その後薄笑いを浮かべる榎木津礼二郎20回くらい見ました。
18日の件につきましては、またメールさせて頂きます。わざわざありがとうございました。
>堀河様
『5.白雪姫の~』お読み頂いてありがとうございます&おかえりなさいませ!
また堀河様のサイトが見られるようになって嬉しいです。通ってます。牛かわいいです。
青木様は攻だと思っていたのですが実際書いてみたら思いのほか受で…あれ…びっくりした…。
「青木さん」とか呼んでますが青木に対して下から上から目線みたいなところあると思うので、そこが萌えです。
「常識的にかわいい」っていうお言葉に笑いました。日常的に使いたいです。
ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
――――
というわけで、帰って参りました。4月は残酷な季節でした…。しばらく締め切りは無いので、通常ペースでとことこやっていこうと思っております。眩暈坂上までいつの間にか半年を切った(!)ので、どんな本を作ろうかなぁと考えているところです。楽しみすぎて死にそうですがまだ死ねない。頑張ります。チャットもまたやりたいです。
先日真宏様のところで榎益チャットにお邪魔したのですが、その時に「無人島DE榎益」で盛り上がったのが忘れられません。誰かやってくれませんか、無人島企画…。滝壺とか手ごろな洞窟とか断崖絶壁とか浅瀬とか果物が取れる木とか花畑とか温泉とかが全部ある外周3キロ程度の小さな無人島に榎木津と益田を放ってみる企画なんですけど(誰得)(私得)
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良い買い物をした。
階段を踏みしめながら、益田はぶら下げた荷物に目をやる。あまり乱暴に振り回すと中身を壊してしまうかもしれない。けれど、浮かれずにはいられない。
白い紙袋の中には白い紙箱が入っていて、中には洋菓子が入っている。今日終えた仕事の依頼料で買ったものだ。
其の店にはいつも冗談のように長い列が出来ていて、益田は横目で見過ごすだけだった。けれど今日は天気も良く、暇潰しがてらそっと行列に加わってみたのである。まさか最後の一つが買えるとは思わなかった。自分の後ろに並んでいた人々からの不平の声と、羨望の視線を潜り抜け、益田は事務所のドアを開く。からんからん、というご機嫌な音。
誰も居ないかと思われたソファの陰から、栗色の髪がぴょこりと飛び上がった。
「あ、榎木津さん」
「ん」
午睡から覚めた榎木津は、ぺしゃりと潰れた柔らかな髪を手で掻き回している。まだ何処か寝ぼけているようだ。
まどろみを残した半開きの瞳がやがて益田を捉え、二、三度の瞬きの後、にいと笑った。
「気が利くじゃないか」
「え?」
「和寅も居ないし、起きててもしょうがないから寝てたんだけど」
「あ、和寅さん居ないんですか。なあんだ、紅茶煎れて欲しかったのになぁ」
「紅茶なんか腹の足しになるか。僕はお腹がぺこぺこなんだ」
流麗な指先が益田を、いや益田が携えている紙袋を指す。
「美味しそうなシュークリームじゃないか、なぁ益山」
榎木津の瞳が、鼠を狙う猫の如く細められたのを見て、益田は慌てて後ろ手に其れを隠した。
「こ、これは駄目ですよう。僕が労働報酬の一部で、身銭を切って買ったんですから」
「下僕のものは僕のものだ。僕が食べたいと云ったら下僕はハイどうぞと云って差し出せば良い!」
栗色の猫はすくりと立ち上がり、じりじりと益田に迫ってくる。
益田は後ずさりしたが、扉は自分で閉めてしまっていた。ドアノブが腰にぶつかり、カウベルが軽くからりと音を立てる。
益田がうっと思うのと同時に、榎木津の両腕が顔の横に突かれた。閉じ込められた格好だ。腰が引けて、僅かに屈伸した両足を探偵の膝が割る。これでは、へたり込む事も出来ない。鼻先がぶつかりそうなほどに顔を寄せられて、くらくらする。
「獲物」を捕らえた榎木津は、長い黒髪から少しばかり覗く耳殻に、吹き込むように囁いた。
「益山、それ頂戴」
吐息に揺れる髪が、触れ合った体がぞくぞくと震える。
取り落としそうになった紙袋を握る右手にまで、榎木津の指先が這わされた。
ここまでされて諦めない人間が居るのなら、益田はお目にかかりたい。そして、まんまと獲物を取り上げられない方法のひとつもご教授頂きたいところである。
■
空になった紙袋と紙箱を前に、益田は自分で淹れた紅茶を渋面で啜っていた。せめてもの慰めにと思ってやたらに砂糖を入れた所為で、喉に絡みつくような変な味がする。
対面に座っている榎木津は、機嫌良く銀紙を剥がしてその場に捨てた。香ばしく焼きあがった生地にふりかけられた粉糖は白く、やや黄味がかったクリームがちらりと見える様子は、人の手にあると余計旨そうに見える。
「いただきまーす」
榎木津は益田の方を見もせずに、シュークリームに齧り付いた。やや大きめの其れは一口では収まりきらず、受け止め切れなかった柔らかなクリームがだらりと垂れる。手の甲で榎木津が其れを拭うのを見上げながら、敬意も有難みも何も無い食べっぷりに益田は内心嘆息した。
「うん、うん、甘い」
「そりゃあそうでしょうよ、洋菓子なんですから…」
カップの底で溶け残った砂糖が切ない。益田が未練がましく銀匙で其れをかき混ぜていると、榎木津は残ったもう半分もぱくりと口に入れて、やや冷めた紅茶で一気に流し込んでしまった。実質二口だ。握り飯だってもうちょっと時間をかけて食べる。益田の視線を完全に無視したまま、榎木津は大きな欠伸をした。
「うーん、足りないぞ。やっぱりあんなもんじゃあ腹は膨れないね」
「贅沢云わんでくださいよ!僕が浮かばれないじゃないですか」
もはや涙目になっている益田の顔に、ふと榎木津の手が触れた。はっと目を瞬かせると、応接テーブルに乗り上げた榎木津がいる。頬をなぞる親指にざらりとした感触を感じ、彼の指に残った粉糖だとなんとなく理解した。
「甘い物のあとは、しょっぱいものが食べたい」
先程益田の荷物を狙った時と同じ瞳をしている。ただ対象が益田本人に変わっただけだ。
獲物の頬から手を放さずに、ティーセットを押し退けながら進んでくる捕食者に、益田の喉から引きつった悲鳴が漏れる。
「えのきづさ」
「ただいま戻りましたよ」
からからん、とドアベルが鳴った。
■
「僕ぁですね、ほんともう、今日ほど和寅さんに感謝したことは無いです」
「いつも感謝してくれよ。大の大人が2人も居て飯の用意も出来ないのかい」
和寅が作ってくれた茶漬けが臓腑に染み渡る。白飯の上にちょんと乗った刻み昆布の塩気が嬉しくて、益田はほっと胸をなでおろした。
目の前では、乱暴に箸と茶碗が打ち付けあう音が引っ切り無しに響いている。直ぐに空になった茶碗をずいと突き出す榎木津の眉はぎゅっと寄せられていた。
「おかわり!」
「もう3杯目ですぜ先生、そんなにお腹空いてたんですか、悪い事をしましたなあ」
「良かったですね榎木津さん、しょっぱいもの作ってもらって…」
鳶色の瞳に睨まれて、益田は言葉を止めた。
3杯目の茶漬けを掻き込みながらも榎木津の視線がずっと自分を射ているのが恐ろしい。
狩りの邪魔をされた動物がどんな行動に出るのか益田は知らなかったので、逃げるべきか逃げないべきかも解らぬままに、僅かにこびり付いていた粉糖をそっと拭った。
――――
あははははは…あーあ…。
「意味もなくエロい」榎木津に挑戦しましたが、本当に何の意味もありませんでした。
階段を踏みしめながら、益田はぶら下げた荷物に目をやる。あまり乱暴に振り回すと中身を壊してしまうかもしれない。けれど、浮かれずにはいられない。
白い紙袋の中には白い紙箱が入っていて、中には洋菓子が入っている。今日終えた仕事の依頼料で買ったものだ。
其の店にはいつも冗談のように長い列が出来ていて、益田は横目で見過ごすだけだった。けれど今日は天気も良く、暇潰しがてらそっと行列に加わってみたのである。まさか最後の一つが買えるとは思わなかった。自分の後ろに並んでいた人々からの不平の声と、羨望の視線を潜り抜け、益田は事務所のドアを開く。からんからん、というご機嫌な音。
誰も居ないかと思われたソファの陰から、栗色の髪がぴょこりと飛び上がった。
「あ、榎木津さん」
「ん」
午睡から覚めた榎木津は、ぺしゃりと潰れた柔らかな髪を手で掻き回している。まだ何処か寝ぼけているようだ。
まどろみを残した半開きの瞳がやがて益田を捉え、二、三度の瞬きの後、にいと笑った。
「気が利くじゃないか」
「え?」
「和寅も居ないし、起きててもしょうがないから寝てたんだけど」
「あ、和寅さん居ないんですか。なあんだ、紅茶煎れて欲しかったのになぁ」
「紅茶なんか腹の足しになるか。僕はお腹がぺこぺこなんだ」
流麗な指先が益田を、いや益田が携えている紙袋を指す。
「美味しそうなシュークリームじゃないか、なぁ益山」
榎木津の瞳が、鼠を狙う猫の如く細められたのを見て、益田は慌てて後ろ手に其れを隠した。
「こ、これは駄目ですよう。僕が労働報酬の一部で、身銭を切って買ったんですから」
「下僕のものは僕のものだ。僕が食べたいと云ったら下僕はハイどうぞと云って差し出せば良い!」
栗色の猫はすくりと立ち上がり、じりじりと益田に迫ってくる。
益田は後ずさりしたが、扉は自分で閉めてしまっていた。ドアノブが腰にぶつかり、カウベルが軽くからりと音を立てる。
益田がうっと思うのと同時に、榎木津の両腕が顔の横に突かれた。閉じ込められた格好だ。腰が引けて、僅かに屈伸した両足を探偵の膝が割る。これでは、へたり込む事も出来ない。鼻先がぶつかりそうなほどに顔を寄せられて、くらくらする。
「獲物」を捕らえた榎木津は、長い黒髪から少しばかり覗く耳殻に、吹き込むように囁いた。
「益山、それ頂戴」
吐息に揺れる髪が、触れ合った体がぞくぞくと震える。
取り落としそうになった紙袋を握る右手にまで、榎木津の指先が這わされた。
ここまでされて諦めない人間が居るのなら、益田はお目にかかりたい。そして、まんまと獲物を取り上げられない方法のひとつもご教授頂きたいところである。
■
空になった紙袋と紙箱を前に、益田は自分で淹れた紅茶を渋面で啜っていた。せめてもの慰めにと思ってやたらに砂糖を入れた所為で、喉に絡みつくような変な味がする。
対面に座っている榎木津は、機嫌良く銀紙を剥がしてその場に捨てた。香ばしく焼きあがった生地にふりかけられた粉糖は白く、やや黄味がかったクリームがちらりと見える様子は、人の手にあると余計旨そうに見える。
「いただきまーす」
榎木津は益田の方を見もせずに、シュークリームに齧り付いた。やや大きめの其れは一口では収まりきらず、受け止め切れなかった柔らかなクリームがだらりと垂れる。手の甲で榎木津が其れを拭うのを見上げながら、敬意も有難みも何も無い食べっぷりに益田は内心嘆息した。
「うん、うん、甘い」
「そりゃあそうでしょうよ、洋菓子なんですから…」
カップの底で溶け残った砂糖が切ない。益田が未練がましく銀匙で其れをかき混ぜていると、榎木津は残ったもう半分もぱくりと口に入れて、やや冷めた紅茶で一気に流し込んでしまった。実質二口だ。握り飯だってもうちょっと時間をかけて食べる。益田の視線を完全に無視したまま、榎木津は大きな欠伸をした。
「うーん、足りないぞ。やっぱりあんなもんじゃあ腹は膨れないね」
「贅沢云わんでくださいよ!僕が浮かばれないじゃないですか」
もはや涙目になっている益田の顔に、ふと榎木津の手が触れた。はっと目を瞬かせると、応接テーブルに乗り上げた榎木津がいる。頬をなぞる親指にざらりとした感触を感じ、彼の指に残った粉糖だとなんとなく理解した。
「甘い物のあとは、しょっぱいものが食べたい」
先程益田の荷物を狙った時と同じ瞳をしている。ただ対象が益田本人に変わっただけだ。
獲物の頬から手を放さずに、ティーセットを押し退けながら進んでくる捕食者に、益田の喉から引きつった悲鳴が漏れる。
「えのきづさ」
「ただいま戻りましたよ」
からからん、とドアベルが鳴った。
■
「僕ぁですね、ほんともう、今日ほど和寅さんに感謝したことは無いです」
「いつも感謝してくれよ。大の大人が2人も居て飯の用意も出来ないのかい」
和寅が作ってくれた茶漬けが臓腑に染み渡る。白飯の上にちょんと乗った刻み昆布の塩気が嬉しくて、益田はほっと胸をなでおろした。
目の前では、乱暴に箸と茶碗が打ち付けあう音が引っ切り無しに響いている。直ぐに空になった茶碗をずいと突き出す榎木津の眉はぎゅっと寄せられていた。
「おかわり!」
「もう3杯目ですぜ先生、そんなにお腹空いてたんですか、悪い事をしましたなあ」
「良かったですね榎木津さん、しょっぱいもの作ってもらって…」
鳶色の瞳に睨まれて、益田は言葉を止めた。
3杯目の茶漬けを掻き込みながらも榎木津の視線がずっと自分を射ているのが恐ろしい。
狩りの邪魔をされた動物がどんな行動に出るのか益田は知らなかったので、逃げるべきか逃げないべきかも解らぬままに、僅かにこびり付いていた粉糖をそっと拭った。
お題提供:『キンモクセイの泣いた夜』様
――――
あははははは…あーあ…。
「意味もなくエロい」榎木津に挑戦しましたが、本当に何の意味もありませんでした。
榎木津探偵が結婚するらしい」と云う噂を聞いた。
そんな訳で、せめて祝いの花束でも贈ろうかと思った益田である。
花屋で作ってもらったブーケは、大輪の薔薇や可憐なかすみ草の他にも益田が名前も知らないような花々で出来ていた。
その全てが純白で、束ねるサテンのリボンも純白。抱える益田の顔も心なしか蒼白だ。溜息を溢す度に花弁が幸せそうに揺れる。
榎木津が過去に幾人もの女性との付き合いがあったことは知っている。
天職だと云って探偵業なぞに身をやつしてはいるが、彼は名家の次男坊で、是非にと望む淑女が後を絶たないことも知っている。
其のどれもが、益田には全く無縁の世界の話だということも、勿論知っている。
頭で解ってはいるが、心が追いつかない。あの滅茶苦茶な人物を一生面倒見る女性が現れてくれたならば、めでたいことに違いないのに。
こんなに早く、結婚だなんて。
「…いつの間に…」
すれ違う人々のざわめきも気に留めず、花束を胸に抱いて歩く益田の呟きは宙に溶けて消えた。
「えと、おめでとうございます」
わさっ、と差し出された花束に、榎木津は眉をすがめた。
「…なにこれ」
「なにこれって、お祝いです」
見上げてくる鳶色の瞳が綺麗で、益田は涙が出そうになった。もう直ぐ彼の傍らには益田の知らない女性が立つのだ。
手が震えてしまい、触れ合う葉や茎がかさかさと鳴る。窓から吹き込んだ薄い薄い色の花弁が、益田の涙をさらった。
「けっ、けっ、けっこ、け」
「コケッコ?ニワトリか」
「ご、ご結婚、おめでとうございます!」
更に突き出された白い花々と益田とを、榎木津がじろじろと見比べている。
「結婚?誰が」
「榎木津さんが」
「誰と」
「いやそこまでは知りませんけど、どうせ麗しいお嬢様なんでしょう、羨ましいです」
「何時」
「何時でも予定空けますから、結婚式には呼んでくださいねぇ」
「何処で」
「もうやめてくださいよぅ、悲しいじゃないですか」
間の抜けた質問攻めに少し乾いた涙を拭えば、相変わらずの丸い瞳が其処にあった。
立ち上がった榎木津と、花束を挟んで対峙する。花の匂いに混じって馴染んだ神の気配が香る。
「マスヤマ今おめでとうって云ったじゃないか、おめでとうっていうのは嬉しい時に云うんだぞ、何故泣く!」
「さぁ、何ででしょう。僕にもとんと」
「解らないことでメソメソしない!こんなもん要らないから、返すぞカマヤマ早とちりオロカ」
押し返された花束を抱いて、益田は呆然としてしまった。
早とちり、今彼はそう云ったか。ならば自分の動揺は、衝撃は、喪失感は。
霧散した其れらを埋めるように、じわじわと安堵が込み上げて益田は笑った。
「なんだぁ、良かったぁ…」
「おめでたくなかったんじゃないか。だったらおめでとうなんて云うな、吃驚するだろうスーペリアバカオロカめ」
「もう原型とどめてないじゃないですかぁ、僕は益田ですって」
「榎木津にしてやろうか」
「え」
返事は出来なかった。唇で唇を塞がれたからだ。
春風をはらんだ薄手のカーテンがふわりと覆いかぶさり、神聖な光景のようですらある。
互いの胸の間で白い花たちが舞い、祝福の鐘のようにカウベルが鳴り、不幸にも戻ってきた和寅の悲鳴が響き渡った。
「榎木津探偵が結婚するらしい、どうやら相手は助手らしい」と云う噂が立った。
其れが中野の古書店にまで届いたのは4月も半ば過ぎのことで、
店の周辺だけで不機嫌極まる様相の冬将軍を見たものが居たとか、居なかったとか。
――――
ハッピーエイプリルフール!1コマ目でオチがバレバレです。
そんな訳で、せめて祝いの花束でも贈ろうかと思った益田である。
花屋で作ってもらったブーケは、大輪の薔薇や可憐なかすみ草の他にも益田が名前も知らないような花々で出来ていた。
その全てが純白で、束ねるサテンのリボンも純白。抱える益田の顔も心なしか蒼白だ。溜息を溢す度に花弁が幸せそうに揺れる。
榎木津が過去に幾人もの女性との付き合いがあったことは知っている。
天職だと云って探偵業なぞに身をやつしてはいるが、彼は名家の次男坊で、是非にと望む淑女が後を絶たないことも知っている。
其のどれもが、益田には全く無縁の世界の話だということも、勿論知っている。
頭で解ってはいるが、心が追いつかない。あの滅茶苦茶な人物を一生面倒見る女性が現れてくれたならば、めでたいことに違いないのに。
こんなに早く、結婚だなんて。
「…いつの間に…」
すれ違う人々のざわめきも気に留めず、花束を胸に抱いて歩く益田の呟きは宙に溶けて消えた。
「えと、おめでとうございます」
わさっ、と差し出された花束に、榎木津は眉をすがめた。
「…なにこれ」
「なにこれって、お祝いです」
見上げてくる鳶色の瞳が綺麗で、益田は涙が出そうになった。もう直ぐ彼の傍らには益田の知らない女性が立つのだ。
手が震えてしまい、触れ合う葉や茎がかさかさと鳴る。窓から吹き込んだ薄い薄い色の花弁が、益田の涙をさらった。
「けっ、けっ、けっこ、け」
「コケッコ?ニワトリか」
「ご、ご結婚、おめでとうございます!」
更に突き出された白い花々と益田とを、榎木津がじろじろと見比べている。
「結婚?誰が」
「榎木津さんが」
「誰と」
「いやそこまでは知りませんけど、どうせ麗しいお嬢様なんでしょう、羨ましいです」
「何時」
「何時でも予定空けますから、結婚式には呼んでくださいねぇ」
「何処で」
「もうやめてくださいよぅ、悲しいじゃないですか」
間の抜けた質問攻めに少し乾いた涙を拭えば、相変わらずの丸い瞳が其処にあった。
立ち上がった榎木津と、花束を挟んで対峙する。花の匂いに混じって馴染んだ神の気配が香る。
「マスヤマ今おめでとうって云ったじゃないか、おめでとうっていうのは嬉しい時に云うんだぞ、何故泣く!」
「さぁ、何ででしょう。僕にもとんと」
「解らないことでメソメソしない!こんなもん要らないから、返すぞカマヤマ早とちりオロカ」
押し返された花束を抱いて、益田は呆然としてしまった。
早とちり、今彼はそう云ったか。ならば自分の動揺は、衝撃は、喪失感は。
霧散した其れらを埋めるように、じわじわと安堵が込み上げて益田は笑った。
「なんだぁ、良かったぁ…」
「おめでたくなかったんじゃないか。だったらおめでとうなんて云うな、吃驚するだろうスーペリアバカオロカめ」
「もう原型とどめてないじゃないですかぁ、僕は益田ですって」
「榎木津にしてやろうか」
「え」
返事は出来なかった。唇で唇を塞がれたからだ。
春風をはらんだ薄手のカーテンがふわりと覆いかぶさり、神聖な光景のようですらある。
互いの胸の間で白い花たちが舞い、祝福の鐘のようにカウベルが鳴り、不幸にも戻ってきた和寅の悲鳴が響き渡った。
「榎木津探偵が結婚するらしい、どうやら相手は助手らしい」と云う噂が立った。
其れが中野の古書店にまで届いたのは4月も半ば過ぎのことで、
店の周辺だけで不機嫌極まる様相の冬将軍を見たものが居たとか、居なかったとか。
――――
ハッピーエイプリルフール!1コマ目でオチがバレバレです。
Web拍手お返事です。ありがとうございます。
>アメコ様
こんばんは、昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。
『わすれもの』お読み頂いてありがとうございます。折角のリクエストなので私なりに亀井像を模索してはみたのですが、本職の亀井師(って言うのかな…)さんから見て変じゃないかどうかが気になっておりました。神奈川時代も機会があれば書いてみたいです。前髪短い益田を。
またお話できる機会がありましたら嬉しいです。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
日曜日は益田師の皆様と、オフでお会いする機会に恵まれました。
昼食とカラオケと夕食をご一緒させて頂いたのですが、移動中益田の話に夢中になるあまり、先導してくださっていたお二方と、残り全員がまとめてはぐれるというウルトラCを成し遂げてしまいました。遭難原因:益田。カラオケでは、当初からの夢だった「益田ソングのお裾分け」をして貰えたり、懐メロ祭りだったり、スケブを描いて頂いたり(!)夢が一杯の時間を過ごせました。夢かなぁと思っても現実にスケブはあるし…幸せです。
夕食のお店に着いていったら、予約名「益田様」がバーンと書いてあって腰が抜けました。店の予約までしてくれてるとはさすが益田、慣れてる!気が利く!
京極界ではこのブログからほとんど外に出たことがない私が何故このような神の集いに呼んで頂けたのか正直今でも良く解っていないのですが、幸運に甘えて精一杯楽しませて頂きました。次の機会がありましたらまた是非…と言ってみたりして。とにかくもう、ありがとうございました!
>アメコ様
こんばんは、昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。
『わすれもの』お読み頂いてありがとうございます。折角のリクエストなので私なりに亀井像を模索してはみたのですが、本職の亀井師(って言うのかな…)さんから見て変じゃないかどうかが気になっておりました。神奈川時代も機会があれば書いてみたいです。前髪短い益田を。
またお話できる機会がありましたら嬉しいです。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
日曜日は益田師の皆様と、オフでお会いする機会に恵まれました。
昼食とカラオケと夕食をご一緒させて頂いたのですが、移動中益田の話に夢中になるあまり、先導してくださっていたお二方と、残り全員がまとめてはぐれるというウルトラCを成し遂げてしまいました。遭難原因:益田。カラオケでは、当初からの夢だった「益田ソングのお裾分け」をして貰えたり、懐メロ祭りだったり、スケブを描いて頂いたり(!)夢が一杯の時間を過ごせました。夢かなぁと思っても現実にスケブはあるし…幸せです。
夕食のお店に着いていったら、予約名「益田様」がバーンと書いてあって腰が抜けました。店の予約までしてくれてるとはさすが益田、慣れてる!気が利く!
京極界ではこのブログからほとんど外に出たことがない私が何故このような神の集いに呼んで頂けたのか正直今でも良く解っていないのですが、幸運に甘えて精一杯楽しませて頂きました。次の機会がありましたらまた是非…と言ってみたりして。とにかくもう、ありがとうございました!