Web拍手お返事です。ありがとうございます。
>つづき楽しみに待ってます~…!!!!!
ありがとうございます。
お題目に沿った話と、前の話に沿った話、両方やるのは大変ですが楽しいです。
頑張って書いておりますので、もう少々お待ちくださいませ。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
現在ネット界で、新種のウイルスが猛威を振るっております。
ウイルスによって改竄されたサイトを閲覧するだけで感染してしまい、サイト持ちさんの場合は更にFTPを介してサイトが改竄され、二次感染を招いてしまうというものです。
『愛がほしいかそらやるぞ』はブログサイトですので、今のところ閲覧に問題は無いかと思いますが、亜種が多発しているようですのでくれぐれも皆様お気をつけください。
Macintoshユーザーの方は不具合こそ出ないものの、ウイルスを保有している状態になってしまう可能性があるそうです。
安全のためにも、一度ウイルスチェックを実施なさる事を強くお勧め致します。
通称「GENOウイルス」・同人サイト向け対策まとめ
http://www31.atwiki.jp/doujin_vinfo/
私のパソコンも、先日感染が確認されました。
再セットアップ後セキュリティ環境を整備しなおし、現在は駆除が完了しておりますが前述の通り亜種が出ているそうなので再感染が怖いです。
感染後もまとめサイトさんのチュートリアルがわかりやすかったので、割合スムーズに復帰出来ました。
そんな事もあり更新が遅れております。遊びに来てくださった皆様、申し訳ございませんでした。
>つづき楽しみに待ってます~…!!!!!
ありがとうございます。
お題目に沿った話と、前の話に沿った話、両方やるのは大変ですが楽しいです。
頑張って書いておりますので、もう少々お待ちくださいませ。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
現在ネット界で、新種のウイルスが猛威を振るっております。
ウイルスによって改竄されたサイトを閲覧するだけで感染してしまい、サイト持ちさんの場合は更にFTPを介してサイトが改竄され、二次感染を招いてしまうというものです。
『愛がほしいかそらやるぞ』はブログサイトですので、今のところ閲覧に問題は無いかと思いますが、亜種が多発しているようですのでくれぐれも皆様お気をつけください。
Macintoshユーザーの方は不具合こそ出ないものの、ウイルスを保有している状態になってしまう可能性があるそうです。
安全のためにも、一度ウイルスチェックを実施なさる事を強くお勧め致します。
通称「GENOウイルス」・同人サイト向け対策まとめ
http://www31.atwiki.jp/doujin_vinfo/
私のパソコンも、先日感染が確認されました。
再セットアップ後セキュリティ環境を整備しなおし、現在は駆除が完了しておりますが前述の通り亜種が出ているそうなので再感染が怖いです。
感染後もまとめサイトさんのチュートリアルがわかりやすかったので、割合スムーズに復帰出来ました。
そんな事もあり更新が遅れております。遊びに来てくださった皆様、申し訳ございませんでした。
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『4.覚悟はとうに出来ていた』の続きです。(時間軸的には前の話にあたります)
榎益榎の事後描写を含みます。直接描写はありません。
榎益榎の事後描写を含みます。直接描写はありません。
「ばれちゃい、ましたぁ」
開口一番そう言った益田の笑顔は、鳥口が知るどの笑顔とも異なっていた。眉尻を下げながらも上目遣いで、哀れを請うような笑みでも、八重歯を見せてけらけらと甲高く笑うものでも無い。誰が見ても微笑んでいるのに、何処か所在無げな。けれど鳥口はその表情を見て、何も汲み取ることは出来なかった。
とはいえいつも通りふらりと現れた様子からは深刻な気配を感じなかったので、鳥口は笑い混じりの口調で、軽く問いかける。
「えぇ、ばれちゃったって、何が? 尾け回してた後家さんに怒られちゃった?」
「怒られる前に逃げてきちゃいました」
「そういうの本当上手いなぁ益田君は」
「いやぁ、恐縮恐縮」
益田を横に立たせ、歩き出す。いつもの飲み屋はここから直ぐだ。適当な雑談を交わしながら、肩を並べて歩く。益田の横顔は相変わらず薄ら笑いを浮かべている。何のことは無い、意味を持たないただの笑顔だったのだ。鳥口はそう納得し、いつしか当初の僅かな疑問を忘れた。
そうこうするうちに2人の足は、1枚の木戸の前で止まる。ところが、もう日も落ちたというのに扉は閉て切られ、看板はおろか暖簾すら出ていない。益田が手をかけて引っ張ってみたが、扉はがたがたと軋むだけで2人を受け入れようとはしなかった。
「あれー益田君、今日何日だっけ?」
「25日ですけど」
「あっちゃあしまった、この飲み屋今日休みなんすよ。定休日」
前に編集長と飲みに来た時も閉まっていて、覚えておこうと思っていたのに今この瞬間まで忘れていた。鳥口はばつが悪げに後頭部を掻いた。今日の飲みに益田を誘ったのは、自分だったからだ。
「別の店にしましょうか」
「うーんどうだろう、今から別の店っていうのも江戸の敵を棒で打つ感じでなんか……あっそうだ、家来ません?」
「下宿でしょ?あんまり長居したら、下のお店に悪いですよ」
「大丈夫ですよ、多分。なんならザーサイのひとつも出してくれるんじゃない」
そうですかぁ、じゃあ甘えちゃおうかなぁ。
そう云う益田の顔は、やはり笑っている。待ち合わせ場所で会った時から、寸分違わぬ顔つきで。
そう広くない部屋だ。
酒瓶とグラス2つ、乾きものを乗せた皿。それを男2人で囲めば、ほとんど埋まってしまうほど。
時には手酌で、時にはふざけて酌をし合いながら過ごせば、いつしか瓶の中の水量は目減りしていく。瓶の口から最後の一滴を自分のグラスに落とした鳥口は、ふと益田の顔を見上げた。
「何か良いことあったの?」
「え、何でですか」
「いや、今日会ってから、ずうっと笑ってるから」
現にこの瞬間も、前髪越しの益田には笑みが張りついたままだ。
普段の益田も常にへらへらしているという点では「ずっと」と言えなくも無い。唇を尖らせて不平を述べたり、態と泣き真似をしてみせたり。今日の益田にはそれすら見られず、何をするにもこの調子だ。
「厭だなぁ、僕はいつでも笑顔を絶やさない男ですよ」
「そう言うんじゃなくて…」
鳥口の意識の果てに消えていた疑念が、再びふつりと湧き上がる。
グラスを置き、僅かに益田に顔を寄せる。表層を破って、内側を覗き込もうとするように。こんな仕草をする人間を、鳥口は知っていた。
「……何か、あったの?」
範囲を広げたようで、その実狭めた質問。益田はそれには答えなかった。代わりに、黒髪が靡いて頭ごと鳥口の肩に倒れこんでくる。どさり、という衝撃とともに空の酒瓶が倒れ、ごろごろと転がっていった。
唐突な行動に、慌てたのは鳥口だ。室内は電球が煌々と照らしている。僅かな明かりでもある限り、益田は決して過剰な接触には及ばなかった筈なのに。
「ま、益田君」
引き離す訳にも、肩を抱く訳にもいかず、鳥口の体は硬直したままだ。綿のシャツが、丸まった痩せた背中を覆っている。やや黄味がかった明かりの所為で、その下の肌色を思わせた。
「いつかはこうなるんじゃないかって思ってましたけど」
篭もった声がそう告げて、鳥口ははっとする。僅かに身じろいだ益田の前髪が肩口に擦れ、乾いた音がやけに大きく聞こえた。
「ばれちゃったんですよう」
それはもう聞いた、と言いかける前に、益田が顔を上げる。
ここで初めて、鳥口は間近に益田を見た。胸に埋まる白い顔は、微笑みの形。―――いや違う。
微笑みだと思っていたのは、鳥口が知らなかったからだ。目尻を下げ、口角を上げ。笑顔の面を被っているような、無機質さ。この顔に対しての表現で、「微笑み」以外の語彙を彼は持たない。咄嗟に古書に埋まる男が脳裏を過ぎった。彼ならば、名前を知っているのでは無いだろうか。
見上げる黒い瞳の中には、一際濃く光を吸い込む瞳孔よりも、もっともっと暗い闇を飼っている。
「―――榎木津さんに、僕の気持ち」
何も判らなかったのは、「何も無かった」からだと、鳥口は唐突に理解した。
――――
続きます。
開口一番そう言った益田の笑顔は、鳥口が知るどの笑顔とも異なっていた。眉尻を下げながらも上目遣いで、哀れを請うような笑みでも、八重歯を見せてけらけらと甲高く笑うものでも無い。誰が見ても微笑んでいるのに、何処か所在無げな。けれど鳥口はその表情を見て、何も汲み取ることは出来なかった。
とはいえいつも通りふらりと現れた様子からは深刻な気配を感じなかったので、鳥口は笑い混じりの口調で、軽く問いかける。
「えぇ、ばれちゃったって、何が? 尾け回してた後家さんに怒られちゃった?」
「怒られる前に逃げてきちゃいました」
「そういうの本当上手いなぁ益田君は」
「いやぁ、恐縮恐縮」
益田を横に立たせ、歩き出す。いつもの飲み屋はここから直ぐだ。適当な雑談を交わしながら、肩を並べて歩く。益田の横顔は相変わらず薄ら笑いを浮かべている。何のことは無い、意味を持たないただの笑顔だったのだ。鳥口はそう納得し、いつしか当初の僅かな疑問を忘れた。
そうこうするうちに2人の足は、1枚の木戸の前で止まる。ところが、もう日も落ちたというのに扉は閉て切られ、看板はおろか暖簾すら出ていない。益田が手をかけて引っ張ってみたが、扉はがたがたと軋むだけで2人を受け入れようとはしなかった。
「あれー益田君、今日何日だっけ?」
「25日ですけど」
「あっちゃあしまった、この飲み屋今日休みなんすよ。定休日」
前に編集長と飲みに来た時も閉まっていて、覚えておこうと思っていたのに今この瞬間まで忘れていた。鳥口はばつが悪げに後頭部を掻いた。今日の飲みに益田を誘ったのは、自分だったからだ。
「別の店にしましょうか」
「うーんどうだろう、今から別の店っていうのも江戸の敵を棒で打つ感じでなんか……あっそうだ、家来ません?」
「下宿でしょ?あんまり長居したら、下のお店に悪いですよ」
「大丈夫ですよ、多分。なんならザーサイのひとつも出してくれるんじゃない」
そうですかぁ、じゃあ甘えちゃおうかなぁ。
そう云う益田の顔は、やはり笑っている。待ち合わせ場所で会った時から、寸分違わぬ顔つきで。
そう広くない部屋だ。
酒瓶とグラス2つ、乾きものを乗せた皿。それを男2人で囲めば、ほとんど埋まってしまうほど。
時には手酌で、時にはふざけて酌をし合いながら過ごせば、いつしか瓶の中の水量は目減りしていく。瓶の口から最後の一滴を自分のグラスに落とした鳥口は、ふと益田の顔を見上げた。
「何か良いことあったの?」
「え、何でですか」
「いや、今日会ってから、ずうっと笑ってるから」
現にこの瞬間も、前髪越しの益田には笑みが張りついたままだ。
普段の益田も常にへらへらしているという点では「ずっと」と言えなくも無い。唇を尖らせて不平を述べたり、態と泣き真似をしてみせたり。今日の益田にはそれすら見られず、何をするにもこの調子だ。
「厭だなぁ、僕はいつでも笑顔を絶やさない男ですよ」
「そう言うんじゃなくて…」
鳥口の意識の果てに消えていた疑念が、再びふつりと湧き上がる。
グラスを置き、僅かに益田に顔を寄せる。表層を破って、内側を覗き込もうとするように。こんな仕草をする人間を、鳥口は知っていた。
「……何か、あったの?」
範囲を広げたようで、その実狭めた質問。益田はそれには答えなかった。代わりに、黒髪が靡いて頭ごと鳥口の肩に倒れこんでくる。どさり、という衝撃とともに空の酒瓶が倒れ、ごろごろと転がっていった。
唐突な行動に、慌てたのは鳥口だ。室内は電球が煌々と照らしている。僅かな明かりでもある限り、益田は決して過剰な接触には及ばなかった筈なのに。
「ま、益田君」
引き離す訳にも、肩を抱く訳にもいかず、鳥口の体は硬直したままだ。綿のシャツが、丸まった痩せた背中を覆っている。やや黄味がかった明かりの所為で、その下の肌色を思わせた。
「いつかはこうなるんじゃないかって思ってましたけど」
篭もった声がそう告げて、鳥口ははっとする。僅かに身じろいだ益田の前髪が肩口に擦れ、乾いた音がやけに大きく聞こえた。
「ばれちゃったんですよう」
それはもう聞いた、と言いかける前に、益田が顔を上げる。
ここで初めて、鳥口は間近に益田を見た。胸に埋まる白い顔は、微笑みの形。―――いや違う。
微笑みだと思っていたのは、鳥口が知らなかったからだ。目尻を下げ、口角を上げ。笑顔の面を被っているような、無機質さ。この顔に対しての表現で、「微笑み」以外の語彙を彼は持たない。咄嗟に古書に埋まる男が脳裏を過ぎった。彼ならば、名前を知っているのでは無いだろうか。
見上げる黒い瞳の中には、一際濃く光を吸い込む瞳孔よりも、もっともっと暗い闇を飼っている。
「―――榎木津さんに、僕の気持ち」
何も判らなかったのは、「何も無かった」からだと、鳥口は唐突に理解した。
お題提供:『BALDWIN』様
――――
続きます。
Web拍手お返事です。ありがとうございます。
>蒼月様
『1.煙が目に~』『2.口唇の~』お読みいただいて、ありがとうございます。
1の方は書き上げた後あまりのお題の無駄遣いぶりに碇ゲンドウみたいなポーズでしばし考え込んでしまったものですが、お言葉貰えて有難いです。かっこいい益田が書きたいです。
榎木津視点を私が書くと躁病感が失われてしまうのですが、榎→益がやりたいので半ば無理やり書いてます!ごきげんな榎木津を書くの楽しいですよね。
蒼月様のサイトもいつもワクワクしながら拝見しております。神様話の続きをとりわけ待ち望む日々です。
ありがとうございました。
>史様
はじめまして、管理人のハム星です。
榎益を求めて来てくださったということで、恐縮です。益田まみれのブログですみません。
訳のわからない男榎木津が訳もわからず益田を振り回す感じの榎益が多いですが、どれかが史様の萌えに届いていれば良いなぁと思います。
原作萌えすぎて、最近は「先生が榎益じゃしょうがないな」等言いがかりを口走る日々です…。
今日も一応更新してみましたので、最近の作品もつまんで頂けたら幸いです。
よろしければまた遊びにきてやってくださいね。ありがとうございました。
>林檎様
チャットへのお誘いを頂けて嬉しいです。声をかけてくださってありがとうございます。都合が合いましたら是非遊びに伺わせて頂きたいところです。
原作を読み込んでいらっしゃる林檎様主催となれば、私も原作を読み直す必要を感じております。
インフルエンザのみならずあらゆる病気にお気をつけて、主催頑張ってください。
作品への感想まで貰ってしまって…なんというやさしさ。夜の街=司という超安易な発想でうっかり司初書きです。
もっと沢山のキャラが出せるようになりたいです。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
毎日お題の無駄遣いをしてしまい、ああああってなっているハム星です。
というのも、現在進行中のお題はシロさんに勧めて頂いたサイトさんからお借りしたものなんです。どれもすばらしいお題ばかりで、「ここのお題を使えばシロさんのような素敵な作品が書けるようになるんじゃないの!?」と興奮したものの結果はまぁ、小火騒ぎの話とか書いてしまう始末です。ネタに走る自分が憎い。もっとこう、榎木津の煙草の匂いが髪に移ってしまい初めて己の前髪を呪う益田とか書けばよかった。
それはともかく、シロさんには眩暈坂上2でも散々お世話になる予定です。どうぞ宜しくお願いします(ここで言っても…)
>蒼月様
『1.煙が目に~』『2.口唇の~』お読みいただいて、ありがとうございます。
1の方は書き上げた後あまりのお題の無駄遣いぶりに碇ゲンドウみたいなポーズでしばし考え込んでしまったものですが、お言葉貰えて有難いです。かっこいい益田が書きたいです。
榎木津視点を私が書くと躁病感が失われてしまうのですが、榎→益がやりたいので半ば無理やり書いてます!ごきげんな榎木津を書くの楽しいですよね。
蒼月様のサイトもいつもワクワクしながら拝見しております。神様話の続きをとりわけ待ち望む日々です。
ありがとうございました。
>史様
はじめまして、管理人のハム星です。
榎益を求めて来てくださったということで、恐縮です。益田まみれのブログですみません。
訳のわからない男榎木津が訳もわからず益田を振り回す感じの榎益が多いですが、どれかが史様の萌えに届いていれば良いなぁと思います。
原作萌えすぎて、最近は「先生が榎益じゃしょうがないな」等言いがかりを口走る日々です…。
今日も一応更新してみましたので、最近の作品もつまんで頂けたら幸いです。
よろしければまた遊びにきてやってくださいね。ありがとうございました。
>林檎様
チャットへのお誘いを頂けて嬉しいです。声をかけてくださってありがとうございます。都合が合いましたら是非遊びに伺わせて頂きたいところです。
原作を読み込んでいらっしゃる林檎様主催となれば、私も原作を読み直す必要を感じております。
インフルエンザのみならずあらゆる病気にお気をつけて、主催頑張ってください。
作品への感想まで貰ってしまって…なんというやさしさ。夜の街=司という超安易な発想でうっかり司初書きです。
もっと沢山のキャラが出せるようになりたいです。ありがとうございました。
叩いてくださった方も、ありがとうございました。
毎日お題の無駄遣いをしてしまい、ああああってなっているハム星です。
というのも、現在進行中のお題はシロさんに勧めて頂いたサイトさんからお借りしたものなんです。どれもすばらしいお題ばかりで、「ここのお題を使えばシロさんのような素敵な作品が書けるようになるんじゃないの!?」と興奮したものの結果はまぁ、小火騒ぎの話とか書いてしまう始末です。ネタに走る自分が憎い。もっとこう、榎木津の煙草の匂いが髪に移ってしまい初めて己の前髪を呪う益田とか書けばよかった。
それはともかく、シロさんには眩暈坂上2でも散々お世話になる予定です。どうぞ宜しくお願いします(ここで言っても…)
照準を合わせる。撃鉄を起こす。引鉄を、引く。それだけの事が。
榎木津はごし、と手の甲で目を擦った。柔らかな瞼の肉とともに、僅かに濡れた感触を感じる。
蜃気楼のように霧散した視界が一瞬だけ輪郭を取り戻し、またぼやけた。
左手で左目を覆えば、もう少しばかり景色は明瞭になる。たとえば、革張りのソファ、摺り硝子、書棚、黒い三角錐。片方の目で見る慣れた景色は、立体感を失って奇矯な絵の様ですらあった。
掌を離し、僅かに俯く榎木津が立っているのは慣れた事務所ではなく、遠い街だ。靴先は見える。けれど、その足が踏みしめる世界の細部は、もはや殆ど見えない。石版を敷いたこの道が何処に続くのかなど、知る筈も無い。
榎木津は、色彩ばかりを撒き散らした抽象画の中に住んでいる。天を覆う青、地から伸びる緑、桃色、早いもの、ゆっくりなもの。行けども、行けども。
「榎木津さぁん」
気だるげに顔を向ければ、道の先から近づいてくる人影が見えた。黒いような、白いような。
その顔の横にひときわはっきりと浮かび上がる像は、つまらなそうに両足を投げ出す男の姿だ。音もなく切り替わる映像は、やがてくすんだ鏡に映る貧相な男の顔に変わった。
「―――遅いぞマスヤマ!」
マスヤマと呼ばれた影は、大袈裟にぜぇぜぇと息を弾ませながら立ち止まった。
「す、すみませぇん、依頼人との交渉が長引きまして」
「神を待たせて暢気に珈琲など飲んでいた癖に!」
「是非にと勧められたんですよぅ、勿論榎木津さん待たせて悪いなって思いましたから一気に飲み干しましたよ。まぁ熱いこと、口の中の皮がめくれましたからね」
頼みもしないのに益田は、べぇと舌を見せた。舌の先が僅かに赤い。ちらりと覗く尖った八重歯に、榎木津は顔を寄せた。
「ちょ、何ですか。顔が近いですよ」
「自分から見せておいて何だ、恥ずかしがるほどの代物かカマオロカ」
まともな視力があれば、睫の本数まで数えられそうだ。榎木津はじろじろと益田の顔を検分する。
走った所為と、慣れない接近で頬は僅かに赤い。薄い癖に懇願やら落胆を示すのはやたらに上手い眉、尖った鼻に顎、やや乾いた唇、世界を映すぬばたまの瞳。
この瞳を通せば、榎木津にも世界の像がよく見えた。薄青い空を流れる、掃いたような筋雲。葉を伸ばす並木、はらはら舞う桜色の花弁。物心ついた頃からもう目が悪かった榎木津は、人の目を通してはじめて知るものも多い。
(こんな目を持ってるのに、僕ばかり見て)
なんという馬鹿だと思いながら、僅かに安堵する。
そもそもこの世には見なくても良いものが多すぎるのだ。狭い了見で狭い世界を手前勝手にどうにかしようとする馬鹿が多いせいだ。
「無駄遣いだぞマスヤマ!」
「は!? なんですか藪から棒に」
「もっと花とか、海とか、そういういいものを見れば良いんだ!前髪も邪魔臭いし。僕ならもっといいことに使う」
榎木津の言葉の意味をはかりかねて唖然としていた益田だったが、やがて思い当たったように頬に手を当てた。
「そんなこと言われましても、取り出してハイどうぞって差し上げるわけにもいかないですよう。僕だって2個しか持ってないんですから」
「眼球だけ貰ってもしょうがないだろう、きもちわるいだけだ」
それはお前が嵌めていなさい。
乗馬鞭を渡した時と同じような気安さで榎木津が言うと、益田は釈然としない様子ながらも一応頷く。薄い胸を拳の裏でどんと叩いてやれば、2,3歩よろめいた。
「もたもたしない!行くぞ!」
「えええ、は、はい」
石畳を蹴りながら、先に立って歩く。相変わらず視界は悪いが、一度益田の目を通して視たためか僅かに本来の形を取ったようだ。背から吹き付ける風にのって、小さな声が届いた気がした。榎木津は聞こえないふりで、独自の世界の中を進む。
かつかつと打ち鳴らす踵は、鼓動と同じリズム。
―――こんな僕で良いのなら。あげられるものなら、なんだって。
――――
躁じゃない榎木津書いてすみません。益田が榎木津の目になればいい。
榎木津の視界についてとか、色々ファンタジー…。
榎木津はごし、と手の甲で目を擦った。柔らかな瞼の肉とともに、僅かに濡れた感触を感じる。
蜃気楼のように霧散した視界が一瞬だけ輪郭を取り戻し、またぼやけた。
左手で左目を覆えば、もう少しばかり景色は明瞭になる。たとえば、革張りのソファ、摺り硝子、書棚、黒い三角錐。片方の目で見る慣れた景色は、立体感を失って奇矯な絵の様ですらあった。
掌を離し、僅かに俯く榎木津が立っているのは慣れた事務所ではなく、遠い街だ。靴先は見える。けれど、その足が踏みしめる世界の細部は、もはや殆ど見えない。石版を敷いたこの道が何処に続くのかなど、知る筈も無い。
榎木津は、色彩ばかりを撒き散らした抽象画の中に住んでいる。天を覆う青、地から伸びる緑、桃色、早いもの、ゆっくりなもの。行けども、行けども。
「榎木津さぁん」
気だるげに顔を向ければ、道の先から近づいてくる人影が見えた。黒いような、白いような。
その顔の横にひときわはっきりと浮かび上がる像は、つまらなそうに両足を投げ出す男の姿だ。音もなく切り替わる映像は、やがてくすんだ鏡に映る貧相な男の顔に変わった。
「―――遅いぞマスヤマ!」
マスヤマと呼ばれた影は、大袈裟にぜぇぜぇと息を弾ませながら立ち止まった。
「す、すみませぇん、依頼人との交渉が長引きまして」
「神を待たせて暢気に珈琲など飲んでいた癖に!」
「是非にと勧められたんですよぅ、勿論榎木津さん待たせて悪いなって思いましたから一気に飲み干しましたよ。まぁ熱いこと、口の中の皮がめくれましたからね」
頼みもしないのに益田は、べぇと舌を見せた。舌の先が僅かに赤い。ちらりと覗く尖った八重歯に、榎木津は顔を寄せた。
「ちょ、何ですか。顔が近いですよ」
「自分から見せておいて何だ、恥ずかしがるほどの代物かカマオロカ」
まともな視力があれば、睫の本数まで数えられそうだ。榎木津はじろじろと益田の顔を検分する。
走った所為と、慣れない接近で頬は僅かに赤い。薄い癖に懇願やら落胆を示すのはやたらに上手い眉、尖った鼻に顎、やや乾いた唇、世界を映すぬばたまの瞳。
この瞳を通せば、榎木津にも世界の像がよく見えた。薄青い空を流れる、掃いたような筋雲。葉を伸ばす並木、はらはら舞う桜色の花弁。物心ついた頃からもう目が悪かった榎木津は、人の目を通してはじめて知るものも多い。
(こんな目を持ってるのに、僕ばかり見て)
なんという馬鹿だと思いながら、僅かに安堵する。
そもそもこの世には見なくても良いものが多すぎるのだ。狭い了見で狭い世界を手前勝手にどうにかしようとする馬鹿が多いせいだ。
「無駄遣いだぞマスヤマ!」
「は!? なんですか藪から棒に」
「もっと花とか、海とか、そういういいものを見れば良いんだ!前髪も邪魔臭いし。僕ならもっといいことに使う」
榎木津の言葉の意味をはかりかねて唖然としていた益田だったが、やがて思い当たったように頬に手を当てた。
「そんなこと言われましても、取り出してハイどうぞって差し上げるわけにもいかないですよう。僕だって2個しか持ってないんですから」
「眼球だけ貰ってもしょうがないだろう、きもちわるいだけだ」
それはお前が嵌めていなさい。
乗馬鞭を渡した時と同じような気安さで榎木津が言うと、益田は釈然としない様子ながらも一応頷く。薄い胸を拳の裏でどんと叩いてやれば、2,3歩よろめいた。
「もたもたしない!行くぞ!」
「えええ、は、はい」
石畳を蹴りながら、先に立って歩く。相変わらず視界は悪いが、一度益田の目を通して視たためか僅かに本来の形を取ったようだ。背から吹き付ける風にのって、小さな声が届いた気がした。榎木津は聞こえないふりで、独自の世界の中を進む。
かつかつと打ち鳴らす踵は、鼓動と同じリズム。
―――こんな僕で良いのなら。あげられるものなら、なんだって。
お題提供:『BALDWIN』様
――――
躁じゃない榎木津書いてすみません。益田が榎木津の目になればいい。
榎木津の視界についてとか、色々ファンタジー…。