わからないなぁ。実に意味がわからない。だってそうだろう。
誰がみたってマスヤマはぼくのことが好きじゃあないか。
いつ視ても見てるのはしょうもない浮気調査とか以外は全部全部ぜーんぶぼくのことだぞ。あ、でもあんまり目とかは見てないな。手とか背中とかそんなもんだ。ちらちらちらちら、ぼくの目を盗んだつもりでいるのか?オロカだなぁ。そんなことは視るまでもなくわかっているけど。
卑怯だって?なにが卑怯だ。まだまだあるぞ。ぼくが何か言いつけると、口ではなにかうだうだ言っているがいつも嬉しそうじゃないか。尻尾があったらばたばた振っているだろう。里村は縫合が巧いから、もしかしたら縫い付けてくれるかもしれないぞ。何、目立ってしょうがない?そうだな、コソコソ隠れるのはマスヤマの趣味みたいなものだから。
おっ、犬とサルと鳥が揃ったな!桃太郎だ!帰ったら寅に言ってきびだんごを作らせよう。それでマスヤマと関君と鳥ちゃんに配ってやろう。鬼は誰がいいかな。
知ってるか?犬は飼い主に見られてると元気になるんだぞ。マスヤマはぼくがじっと見てるとなんか失敗ばかりするから犬以下かな。うははは。やらなくていいってことをやりに外に出て行くし。でも時間が経って寂しくなったらちゃあんと事務所に戻ってくる。自分から飼われに来る犬はそういない。そこだけは褒めてやってもいいな。
あんまり本当のことを言わないので寝所に連れ込んでやってもいやだいやだと言うし、事が進んだら言うかと思ったらダメだった。上から下から色々やってやったのに。ぜんぜん言葉になってない。沸騰したヤカンみたいに泣きわめくばっかりで。なんだあれは、カマ語か?
全身でぼくを好きだと言っているくせに、口だけが嘘をついている。嘘は良くない!地獄で舌を抜かれるぞ。ぼくは死んだことなどないが、死んだ後でも調子いいことが言えなくなったらさぞ不便だろうなぁ。何も言えなくなってから後悔しても遅いぞ。今のうちに言ってしまえ。
それでも強情を張るつもりなら地獄に行くまでもない、ぼくが舌を抜いてやる。舌を抜かれるとなればいくらオロカでも本当の事を言う気になるんじゃないかな。おっと、泣くか。うはははは、やっぱりナキヤマだ。もう観念すればいい。探偵の前に隠し立てしようってほうが可笑しいんだ。口を開けてみろ、ほら!
あっコラ!逃げるな!ナキヤマ!