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2024/11/23 09:22 |
1.届かないから憧れて
榎益R15。性描写を含みますのでご注意ください。



雨が降る夢を見た。



額に水が落ちたことで、益田ははっと目を覚ました。開いてはいたが、何も映していなかった瞳に光が戻る。
瞬いた睫の隙間を抜けて、額の流線を伝い来た雫がその中に落ちた。

「うぁっ」
「なに」

思わず瞼にぎゅうと力を入れた益田に、声がかかる。榎木津自身を含んだまま意識を飛ばしていたことを、不意に体内を襲った圧迫感によって思い出した。気をやってしまっていたことを恥じるより先に、敏感な粘膜を襲う耐え難い痛みばかりが益田の意識を支配する。

「す、すみません。目が滲みて」

うっすらと目を開けては、また閉じることを繰り返した。そのたびに水の膜を通して、榎木津の輪郭が明滅する。眼球への刺激は湧き出た涙によってやがて薄められ、同じく透明な粒となってうっすらと目尻に浮かび上がる。蒼く夜闇を溶かし込んだ其れは、益田の頬にそって流れ落ちる筈だった。しかし益田の涙は、目尻に落とされた榎木津の唇へと吸い込まれた。

「えっ?」
「塩っからい」

眉を顰めてべぇと舌を出す榎木津の顔は、普段と全く変わらず天真爛漫で、状況とのアンバランスさに益田はただぽかんとするばかりだ。自然と力の抜けた膝頭を榎木津が持ち上げたかと思うと、さらに奥まで入り込まれた。
突然の衝撃に、益田の黒い瞳からは涙が次いで湧き上がる。揺らぐ視界の向こうで、榎木津のやや濡れた髪が律動に合わせて踊るのが見えた。

(榎木津さん)

ひっきりなしに齎される快感の中で、唇に触れられた頬骨が何故か温かい。
けれどその場所は益田の涙がさらさらと流れ落ちるたびに冷めていく。益田を呼び覚ました汗も、交わした体液も、これから屹度益田の内部を満たす榎木津の白濁も、何一つ益田には残らない。幾度の昼と夜を交わしても、其れだけは変わることがなかった。ただ榎木津を欲する、身の程知らずな欲ばかりが強まっていく。
春の雨はやがて冷えて、益田を苛むに違いないのに。

(あつい)

夜空は青く晴れているのに、益田は時折雨の夢を見るのだ。



――――
マスカマチャット宿題「額に(任意の攻)の汗が落ちる益田」。久々なので短めで。
これからやる人もいるかもしれないのに(願望)榎益取ってすみません。


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2009/04/14 22:41 | Comments(0) | TrackBack() | 益田

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