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2024/11/23 03:27 |
3月拍手お礼文
身に纏う衣も少し軽くなった昨今、今日も無事に依頼を片付けた益田は事務所に戻るところだった。
いつに無く平和な午後を過ごし、衣だけでなく足取りも軽い。帰りの道程も心なしか近く感じる。
折角なので甘い物でも食べて帰ろうか。確か途中で甘味処の前を通った筈だ。
仕事も終わっているし、自分への褒美と言う事なら問題はあるまい。
ひょこりと顔を出した所で、益田は眉を潜めた。
何故か目的のビル1階周辺に、人だかりが出来ている。
余程店が繁盛しているのかと思ったが、人の集まり方を見るにそういう訳でも無いようだ。
入店待ちの整然とした行列ではない。
どちらかと言うと、動物園で檻の周りに群がる観客を想起させた。時折黄色い歓声も聞こえてくる。
通り過ぎる振りをして、何気なく列の隙間から店内を覗き込んだ。

「げ」

磨かれた窓硝子の向こうには、事務所に居る筈の探偵が座っていた。
頬杖をついて物憂げな様子は、何処に出しても恥ずかしくない美丈夫そのものであり
通常の彼を知らない通行人などではひとたまりもないだろう。
一体何を、と思い見ていると、理由はすぐに知れた。
彼のもとに運ばれてきたのは、細長い容器にうず高く盛り付けられたデザートだった。
白く滑らかなクリームに真っ赤に熟れた苺がふんだんに飾られて、目にも鮮やかな色彩。
所謂ストロベリーパフェというやつだ。
衆人の関心を一身に集めていると気づいていないのか、はたまた気にしていないのか。
榎木津は嬉々として長いスプーンを突っ込み、クリームを掬い取っては口に運ぶ。
口端に付着したそれを舌で舐め取ったり、苺を口に含んでうっとりと目を細める度、
人ごみの中からは溜息交じりの歓声が上がった。

「何やってるんですか、榎木津さん…」

一心不乱にパフェに食らいついていた榎木津が、急に窓の外に視線を向ける。
ある者は歓喜の悲鳴を上げ、ある者はウインドウに近づいた。後ずさったのは益田位のものだ。
完全に目が合ってしまった。
右手にスプーンを握ったまま、榎木津がずかずかと歩いてくる。
観衆に隠れるようにして、益田は慌てて逃げ出した。
少し離れた処で振り向くと、群れ集う人の頭の間から窓硝子をバンバン叩いている彼の姿が見えた。
何か叫んでいるようだが、全然聞こえない。
何も見なかったことにして、建物を背に益田は駆け出した。

すみません榎木津さん、後でお叱りは幾らでも受けます。



ビルヂング1階のテーラーをパーラーと思い込んで書き始めた(…)お礼文です。


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2009/04/01 03:33 | Comments(0) | TrackBack() | 益田

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