あっ 地雷。
益田がそう思った時には遅かった。
カッと大きく見開かれた目の中で、瞳孔だけが収束するのが見えた。
殴られるかはたまた蹴られるか。
身を竦めた益田に襲い掛かったのは、拳でも靴でもなかった。
大きな猫科の生き物だと思った。
実のところそれは榎木津そのもので、益田の身体は思い切り壁に叩きつけられる。
肉の薄い背中に過ぎた衝撃に、肋骨ごと肺が軋んだが、こみあげてくるえづきを必死でこらえた。
今の益田にはいかなる行為も許されていない。
榎木津の指が肩に、猛禽の爪のように食い込んでいる。
「未だわからないのか!」
榎木津が吠える。
「ぼくはそんなものは必要としていないぞ!見くびっているのか!」
「み、見くびってなんか」
威風堂々たる榎木津の声に、ようやく返したのは息に交じったような掠れ声。
吐息はますます炎を燃え上がらせる。
「なら今の態度はなんだ!俎板の鯉にでもなったつもりか?鯉なら食べるところがあるが、カマなんか転がしたって美味しくもなんともない!どこへでも転がっていってしまえ!」
益田は揺さぶられ、後頭部をしこたま壁にぶつけてしまった。
脳震盪か、あるいは涙か。目の前がぼやけて、榎木津の顔がよく見えない。
神の声がどこか遠くから聞こえる。激情に燃え盛る声は、失望と少しの悲しみを糧にますます紅く広がっていく。
「お前はぼくのせいばかりにする!」
肩に食い込む爪の痛み。
そうなんですよ、榎木津さん。
僕ぁ、なんでも貴方のせいにしてしまう。
下僕だから。神の命令は絶対だから。僕は決して逆らえない。逆らわない。こんなに忠実な下僕は他にいないでしょう?
神から投げつけられるものを、拾い集めて。
そんな僕だからこそ、その命令は、聞けない。
言ったが最後、神の国にはいられないから。
言って欲しい榎木津と、責任転嫁する益田。
益田がそう思った時には遅かった。
カッと大きく見開かれた目の中で、瞳孔だけが収束するのが見えた。
殴られるかはたまた蹴られるか。
身を竦めた益田に襲い掛かったのは、拳でも靴でもなかった。
大きな猫科の生き物だと思った。
実のところそれは榎木津そのもので、益田の身体は思い切り壁に叩きつけられる。
肉の薄い背中に過ぎた衝撃に、肋骨ごと肺が軋んだが、こみあげてくるえづきを必死でこらえた。
今の益田にはいかなる行為も許されていない。
榎木津の指が肩に、猛禽の爪のように食い込んでいる。
「未だわからないのか!」
榎木津が吠える。
「ぼくはそんなものは必要としていないぞ!見くびっているのか!」
「み、見くびってなんか」
威風堂々たる榎木津の声に、ようやく返したのは息に交じったような掠れ声。
吐息はますます炎を燃え上がらせる。
「なら今の態度はなんだ!俎板の鯉にでもなったつもりか?鯉なら食べるところがあるが、カマなんか転がしたって美味しくもなんともない!どこへでも転がっていってしまえ!」
益田は揺さぶられ、後頭部をしこたま壁にぶつけてしまった。
脳震盪か、あるいは涙か。目の前がぼやけて、榎木津の顔がよく見えない。
神の声がどこか遠くから聞こえる。激情に燃え盛る声は、失望と少しの悲しみを糧にますます紅く広がっていく。
「お前はぼくのせいばかりにする!」
肩に食い込む爪の痛み。
そうなんですよ、榎木津さん。
僕ぁ、なんでも貴方のせいにしてしまう。
下僕だから。神の命令は絶対だから。僕は決して逆らえない。逆らわない。こんなに忠実な下僕は他にいないでしょう?
神から投げつけられるものを、拾い集めて。
そんな僕だからこそ、その命令は、聞けない。
言ったが最後、神の国にはいられないから。
お題提供:『ペトルーシュカ』様
――――言って欲しい榎木津と、責任転嫁する益田。
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