「おいテメェ、青木、大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫です。法具も、先輩の教えも、忘れてません」
「これまで俺が育ててやったんだ、霊なんぞに付け込まれるような事ァ無ぇとは思うが――テメェは情がありすぎんだよ。生きた人間にしか見えない奴も居やがる、そんな連中程祓い屋を騙す技を心得てるもんだ」
情が深すぎる点については木場も人の事は云えないと思ったが、黙っていた。厳つく骨ばった木場の顔に、いつもと違う心配の色が乗っていた事を青木は解っている。今日は青木にとって一種の卒業試験であり、祓い屋としての初めての実戦なのだから、むしろ心配して貰えて有難かったと云うものだ。
お守り代わりにとぶっきらぼうな手付きで預けられた数珠をスーツの手首に隠して、青木は夜の道を歩いている。出来合いのスーツは青木を何の力も無い青年にしか見せないが、この衣装を着ている目的は達成されている。最近は霊も随分利口になって、祓い屋でござい、と云わんばかりの格好で歩いていては姿を見せないのだと云う。仕事終わりの会社員の振りをして、何でも無い顔で青木は木場に告げられた場所へと向かった。
川の上を渡る、木組みの小さな橋。橋の中央で急流を見下ろしている男の幽霊を祓う。
それが今夜の青木に課せられた仕事だった。
真下の川に飛び込んだ男は、溺れて死んだのでは無い。見た目より浅い川の底に頭をぶつけて死んだのだ。あっと云う間すぎて、自分が死んだ事に気づけなかったようだ。肉体を失った今になっても、何度でも川に飛び込んで見せては往来の人間を驚かせているのだそうだ。頓馬な野郎だ、と木場は云っていた。
「…あれ、かな…」
気づけば往来する人波を外れ、ざあざあと流れる川の音が五月蝿い程だ。
木製の橋に足を掛けた青木は、直ぐに気が付いた。橋の中央に誰か居る。欄干に上体をもたれさせて、うつむいて流れる川を見ている。聞いた通りだ。青木が何気なく歩み寄るうち、段々幽霊の姿形が見えてきた。長い前髪が覆いかぶさって顔は解らないが、若い男のようだ。
「――こんばんは」
青木がそう呼びかけると、幽霊は顔を上げた。青褪めた細面の中、目尻だけが不思議に紅い。幽霊は青木の姿を認めると、腫らした目を丸くして驚いたように云った。
「あの――貴方、僕が見えるんですか」
「はい――何故?」
「いやお恥ずかしい話なんですけど、僕ぁずっと此処で泣いてたんです。時々人が後ろを通るんですが、声をかけてくれたのは貴方が初めてで。僕は誰にも見えないものになったんじゃないかって、ちょっと心配してたんですよね」
目を手の甲で擦りながら、幽霊は笑った。青木は口元に拳を当ててつられ笑いをする振りをしながら、男の姿を確かめる。命が無いとは思えぬほどの実体感だ。足も在る。成程、これでは騙されてしまうかもしれない――そう思った。隠した数珠を握り込む。
「どうして泣いているのか、伺っても良いですか」
「えっそんな、話す程の事も無いですし」
「此処で会ったのも何かの縁です。話す事で少しは楽になるかも知れない。勿論貴方さえ良ければ――ですが」
青木はさりげなく距離を詰め、自分も欄干に身体を預けた。見下ろす川は黒く、轟音を立てて流れている。
ともかく気づかれず横に立つ事に成功した。青木はそっとポケットに手を差し込み、一枚の紙片を引き出す。只の紙片では無い。魔力を込めた護符は、命無き者に貼り付ける事で妄執ごとこの世から引き剥がす事が出来る。いつもは先輩が作った物を使っていたが、今回は青木が自ら念を込め、作り上げた物だ。
護符を隠した青木の掌が、霊の背中にそっと触れた。
「元気を出してください。こんな処に留まっていても、貴方の為にならない」
「…はい、有難うございます」
男は護符を背中に貼り付けたまま、すんと鼻を鳴らしながらも微笑を浮かべている。
護符は力無く剥がれ落ち、音も無く宙を滑って濁流の中へと消えていった。
「………あれ?」
「どうしましたか」
「いや、何でも」
護符が効かない。青木は内心の動揺を抑えつつ、何でも無いような顔を作って闇の中を見つめた。
作り方を間違えただろうか。いや、それは無い。何度も確かめた。木場が大雑把に書き上げた護符が幾人もの霊を昇天させたのも見ている。幽霊は相変わらず、時折鼻を啜りながら隣に立っている。この実体感だ、見た目によらず大分強い霊という事なのだろう。自分の未熟な法力では相手にならなかったという話か。
落ち込んでいる場合では無い。青木は鞄の中から水筒を抜き取った。
「泣いたら喉が渇いたでしょう。酒でも如何ですか」
「なんでお酒なんか持って歩いてるんですよ。貴方真面目そうな顔して、中々悪い人ですねェ」
そう云いながらも、彼はけらけらと嬉しそうに笑っている。青木も今度はつられてでは無く、本当に笑えた。
(笑う幽霊なんか、初めて見たな)
木場に付き従っていた時は、大概は俯いて誰に聞かせるでもない恨み言を呟いているか、牙を剥いて襲い掛かってくるような連中ばかり見ていた。泣き腫らした目を細めて楽しげに笑う彼も、自分が祓い屋であると知った途端、同じようになるのだろうか。そんな姿は見たくない。青木は水筒を手渡した。
水筒の中には、神の前に供える霊酒が入っている。力で祓うのでは無く、内側から鎮めてやれば苦痛を与えずに逝かせる事が出来るはずだ。その笑顔を損なわせることも無く。
「酒席で飲みきれなくて、持ち帰ってきたんです。そんなに無いですから全部飲んでしまってください」
「そうですか?じゃあ遠慮なく」
幽霊は透明な酒を口に含み、一息に飲み干した。酒に溶け込んだ霊力はきっと彼を輪廻の輪に戻すだろう。
と、思っていたのだが。
「ああこりゃあいいお酒ですねェ。いい心持ちだなァ」
「…………あれ?」
「何か?あれ、本当に全部飲んじゃったんですけど、不味かったですか」
「いや……」
返された水筒を改めても、本当に中は空っぽだ。僅かに残った水滴からも迸るほど強い力を持っていたはずなのに。
霊は相変わらず平然として、それどころか幾分元気になったようだ。見上げてくる黒い瞳には親愛の情すら芽生え始めている。
真っ白になりかけた頭に、木場の言葉が蘇ってきた。
『いいかお前、護符だの神酒だのってモンは所詮オマケよ。俺達の仕事で最後にモノ云うのは足と、コレだ』
『コレ?』
『現場百辺って前も云ったろうが。何度でも会って、話聞いてやれ。襲い掛かってくるような奴ァどうしようもねぇが、ぽつんと取り残されてるようなやつには何か理由ってモンがあんだよ』
『情を移すなって云ったの先輩じゃないですか』
『だから、そう云う話じゃねんだよ。本当にテメェは―――』
冷たい風が吹き抜けて、傍らに立つ幽霊の前髪を浚う。まともに顕わになった顔は、物云わぬ青木を不思議そうに見ている。青木は口を開いた。
「――名前を」
「は、はい?」
「いつまでも貴方貴方では変でしょう。貴方の名前を聞かせてください」
「えぇ、何ですよ藪から棒に。いいじゃないですかそんなの、僕らァ所詮行きずりの仲で」
「確かにそうでした――今までは」
所在無げに欄干に乗っていた手を取ると、幽霊の身体がびくついた。実体感にふさわしくしっかりと握る事が出来たが、やはり酷く冷たい。その事が青木にとって妙に哀しい。
「僕は仕事で此処に来たんです。貴方に声を掛けたのも、本当は偶然じゃない――謝ります」
「そんな、謝るなんて。僕こそ何ていうか有難かったと云うか、その」
「貴方が泣かずに良くなるまで、僕は何度でも此処に来ます。ですから、名前を教えてください。貴方が僕の事を忘れてしまわないように」
「そんな――」
「僕は青木と云います。貴方は?」
見据えた瞳が、水を湛えている。眼下を流れる川のように深い漆黒。けれどその涙は、流れ落ちてしまえば透明な雫になるのだろう。
幽霊は唇を震わせながら、零すように答えた。
「ますだ――益田です」
「益田君」
青木は手を強く握り締めた。
この男がこれ以上、望まぬ死を選ばぬようにしなければならない。酒を勧めた時に見せてくれた笑顔を、曇らせないようにしなければ。
それはもはや職務を超えたところにある目標のような気もする。
そう思うだけで、握りこんだ手に熱が宿るような感じがして、青木は益々強く益田を見つめた。
■
今にも崩れそうな丸木橋の上で、男の怒号が響き渡る。
「青木の野郎、どこで油売ってやがんだ!」
木場はそう吠えると、力を放出し終わった護符を力任せに投げ出した。
いつまで経っても戻ってこないので探しに行ってみれば、橋から身を投げようとしている初老の男に出くわした。止めに入ってみればその身体はするりと木場をすり抜けた。条件反射的に祓ってしまってから、青木が祓うべき霊だったと云うことに気が付いた。
結果的に試験を邪魔してしまった事を謝り、ついでに遅刻に対して叱ってやろうとずっと待っているのだが、依然青木は姿を見せない。
「まだまだ卒業させられそうに無ぇな……っぐしっ!」
盛大なくしゃみが夜闇にこだまする。木場は鼻を啜り上げた。
「チキショウ、こんな夜中に外に何時間も立たせやがって」
すっかり手が冷えちまった。
木場は自分の大きな両手を擦り合わせながら、闇の中を睨み続けている。
―――
第3夜は新米祓い屋青木と結局人間だった益田でした。内容が無い話で…すみません…。
「大丈夫です。法具も、先輩の教えも、忘れてません」
「これまで俺が育ててやったんだ、霊なんぞに付け込まれるような事ァ無ぇとは思うが――テメェは情がありすぎんだよ。生きた人間にしか見えない奴も居やがる、そんな連中程祓い屋を騙す技を心得てるもんだ」
情が深すぎる点については木場も人の事は云えないと思ったが、黙っていた。厳つく骨ばった木場の顔に、いつもと違う心配の色が乗っていた事を青木は解っている。今日は青木にとって一種の卒業試験であり、祓い屋としての初めての実戦なのだから、むしろ心配して貰えて有難かったと云うものだ。
お守り代わりにとぶっきらぼうな手付きで預けられた数珠をスーツの手首に隠して、青木は夜の道を歩いている。出来合いのスーツは青木を何の力も無い青年にしか見せないが、この衣装を着ている目的は達成されている。最近は霊も随分利口になって、祓い屋でござい、と云わんばかりの格好で歩いていては姿を見せないのだと云う。仕事終わりの会社員の振りをして、何でも無い顔で青木は木場に告げられた場所へと向かった。
川の上を渡る、木組みの小さな橋。橋の中央で急流を見下ろしている男の幽霊を祓う。
それが今夜の青木に課せられた仕事だった。
真下の川に飛び込んだ男は、溺れて死んだのでは無い。見た目より浅い川の底に頭をぶつけて死んだのだ。あっと云う間すぎて、自分が死んだ事に気づけなかったようだ。肉体を失った今になっても、何度でも川に飛び込んで見せては往来の人間を驚かせているのだそうだ。頓馬な野郎だ、と木場は云っていた。
「…あれ、かな…」
気づけば往来する人波を外れ、ざあざあと流れる川の音が五月蝿い程だ。
木製の橋に足を掛けた青木は、直ぐに気が付いた。橋の中央に誰か居る。欄干に上体をもたれさせて、うつむいて流れる川を見ている。聞いた通りだ。青木が何気なく歩み寄るうち、段々幽霊の姿形が見えてきた。長い前髪が覆いかぶさって顔は解らないが、若い男のようだ。
「――こんばんは」
青木がそう呼びかけると、幽霊は顔を上げた。青褪めた細面の中、目尻だけが不思議に紅い。幽霊は青木の姿を認めると、腫らした目を丸くして驚いたように云った。
「あの――貴方、僕が見えるんですか」
「はい――何故?」
「いやお恥ずかしい話なんですけど、僕ぁずっと此処で泣いてたんです。時々人が後ろを通るんですが、声をかけてくれたのは貴方が初めてで。僕は誰にも見えないものになったんじゃないかって、ちょっと心配してたんですよね」
目を手の甲で擦りながら、幽霊は笑った。青木は口元に拳を当ててつられ笑いをする振りをしながら、男の姿を確かめる。命が無いとは思えぬほどの実体感だ。足も在る。成程、これでは騙されてしまうかもしれない――そう思った。隠した数珠を握り込む。
「どうして泣いているのか、伺っても良いですか」
「えっそんな、話す程の事も無いですし」
「此処で会ったのも何かの縁です。話す事で少しは楽になるかも知れない。勿論貴方さえ良ければ――ですが」
青木はさりげなく距離を詰め、自分も欄干に身体を預けた。見下ろす川は黒く、轟音を立てて流れている。
ともかく気づかれず横に立つ事に成功した。青木はそっとポケットに手を差し込み、一枚の紙片を引き出す。只の紙片では無い。魔力を込めた護符は、命無き者に貼り付ける事で妄執ごとこの世から引き剥がす事が出来る。いつもは先輩が作った物を使っていたが、今回は青木が自ら念を込め、作り上げた物だ。
護符を隠した青木の掌が、霊の背中にそっと触れた。
「元気を出してください。こんな処に留まっていても、貴方の為にならない」
「…はい、有難うございます」
男は護符を背中に貼り付けたまま、すんと鼻を鳴らしながらも微笑を浮かべている。
護符は力無く剥がれ落ち、音も無く宙を滑って濁流の中へと消えていった。
「………あれ?」
「どうしましたか」
「いや、何でも」
護符が効かない。青木は内心の動揺を抑えつつ、何でも無いような顔を作って闇の中を見つめた。
作り方を間違えただろうか。いや、それは無い。何度も確かめた。木場が大雑把に書き上げた護符が幾人もの霊を昇天させたのも見ている。幽霊は相変わらず、時折鼻を啜りながら隣に立っている。この実体感だ、見た目によらず大分強い霊という事なのだろう。自分の未熟な法力では相手にならなかったという話か。
落ち込んでいる場合では無い。青木は鞄の中から水筒を抜き取った。
「泣いたら喉が渇いたでしょう。酒でも如何ですか」
「なんでお酒なんか持って歩いてるんですよ。貴方真面目そうな顔して、中々悪い人ですねェ」
そう云いながらも、彼はけらけらと嬉しそうに笑っている。青木も今度はつられてでは無く、本当に笑えた。
(笑う幽霊なんか、初めて見たな)
木場に付き従っていた時は、大概は俯いて誰に聞かせるでもない恨み言を呟いているか、牙を剥いて襲い掛かってくるような連中ばかり見ていた。泣き腫らした目を細めて楽しげに笑う彼も、自分が祓い屋であると知った途端、同じようになるのだろうか。そんな姿は見たくない。青木は水筒を手渡した。
水筒の中には、神の前に供える霊酒が入っている。力で祓うのでは無く、内側から鎮めてやれば苦痛を与えずに逝かせる事が出来るはずだ。その笑顔を損なわせることも無く。
「酒席で飲みきれなくて、持ち帰ってきたんです。そんなに無いですから全部飲んでしまってください」
「そうですか?じゃあ遠慮なく」
幽霊は透明な酒を口に含み、一息に飲み干した。酒に溶け込んだ霊力はきっと彼を輪廻の輪に戻すだろう。
と、思っていたのだが。
「ああこりゃあいいお酒ですねェ。いい心持ちだなァ」
「…………あれ?」
「何か?あれ、本当に全部飲んじゃったんですけど、不味かったですか」
「いや……」
返された水筒を改めても、本当に中は空っぽだ。僅かに残った水滴からも迸るほど強い力を持っていたはずなのに。
霊は相変わらず平然として、それどころか幾分元気になったようだ。見上げてくる黒い瞳には親愛の情すら芽生え始めている。
真っ白になりかけた頭に、木場の言葉が蘇ってきた。
『いいかお前、護符だの神酒だのってモンは所詮オマケよ。俺達の仕事で最後にモノ云うのは足と、コレだ』
『コレ?』
『現場百辺って前も云ったろうが。何度でも会って、話聞いてやれ。襲い掛かってくるような奴ァどうしようもねぇが、ぽつんと取り残されてるようなやつには何か理由ってモンがあんだよ』
『情を移すなって云ったの先輩じゃないですか』
『だから、そう云う話じゃねんだよ。本当にテメェは―――』
冷たい風が吹き抜けて、傍らに立つ幽霊の前髪を浚う。まともに顕わになった顔は、物云わぬ青木を不思議そうに見ている。青木は口を開いた。
「――名前を」
「は、はい?」
「いつまでも貴方貴方では変でしょう。貴方の名前を聞かせてください」
「えぇ、何ですよ藪から棒に。いいじゃないですかそんなの、僕らァ所詮行きずりの仲で」
「確かにそうでした――今までは」
所在無げに欄干に乗っていた手を取ると、幽霊の身体がびくついた。実体感にふさわしくしっかりと握る事が出来たが、やはり酷く冷たい。その事が青木にとって妙に哀しい。
「僕は仕事で此処に来たんです。貴方に声を掛けたのも、本当は偶然じゃない――謝ります」
「そんな、謝るなんて。僕こそ何ていうか有難かったと云うか、その」
「貴方が泣かずに良くなるまで、僕は何度でも此処に来ます。ですから、名前を教えてください。貴方が僕の事を忘れてしまわないように」
「そんな――」
「僕は青木と云います。貴方は?」
見据えた瞳が、水を湛えている。眼下を流れる川のように深い漆黒。けれどその涙は、流れ落ちてしまえば透明な雫になるのだろう。
幽霊は唇を震わせながら、零すように答えた。
「ますだ――益田です」
「益田君」
青木は手を強く握り締めた。
この男がこれ以上、望まぬ死を選ばぬようにしなければならない。酒を勧めた時に見せてくれた笑顔を、曇らせないようにしなければ。
それはもはや職務を超えたところにある目標のような気もする。
そう思うだけで、握りこんだ手に熱が宿るような感じがして、青木は益々強く益田を見つめた。
■
今にも崩れそうな丸木橋の上で、男の怒号が響き渡る。
「青木の野郎、どこで油売ってやがんだ!」
木場はそう吠えると、力を放出し終わった護符を力任せに投げ出した。
いつまで経っても戻ってこないので探しに行ってみれば、橋から身を投げようとしている初老の男に出くわした。止めに入ってみればその身体はするりと木場をすり抜けた。条件反射的に祓ってしまってから、青木が祓うべき霊だったと云うことに気が付いた。
結果的に試験を邪魔してしまった事を謝り、ついでに遅刻に対して叱ってやろうとずっと待っているのだが、依然青木は姿を見せない。
「まだまだ卒業させられそうに無ぇな……っぐしっ!」
盛大なくしゃみが夜闇にこだまする。木場は鼻を啜り上げた。
「チキショウ、こんな夜中に外に何時間も立たせやがって」
すっかり手が冷えちまった。
木場は自分の大きな両手を擦り合わせながら、闇の中を睨み続けている。
―――
第3夜は新米祓い屋青木と結局人間だった益田でした。内容が無い話で…すみません…。
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